福岡で2歳死亡・・・小児歯科における局所麻酔の危険性は? | 歯医者の選び方 | 歯医者がおすすめする歯科医院
2018年1月18日

福岡の歯科医院で、虫歯治療後に2歳の女児が死亡するという痛ましい事件が起きました。局所麻酔との関連性が疑われますが、そもそも子どもに局所麻酔をしても大丈夫なのでしょうか。
歯科における麻酔にはどのような種類があるのか、また起こりうる副作用、その予防対策について紹介します。

子どもに麻酔は大丈夫?

15歳以下の小児に対する局所麻酔の安全性は確立されていません。というのも、安全性を確認するための臨床実験が難しいという事情があるからです。
安全性が確立されていないとはいえ、麻酔なしの治療は痛みが伴い、現実的に困難を極めます。特に小児は治療に対する協力が得られないため、できるだけ恐怖や痛みを感じないように治療を行う必要があります。麻酔薬を使うことで起きるリスクよりも、使うことのメリットの方が明らかに上回ることから、局所麻酔はどこの小児歯科でも日常的に取り入れられています。
歯科における麻酔は、大きく分けて局所麻酔と全身麻酔に分けられます。また、精神面へ作用する精神鎮静法があります。

局所麻酔

局所麻酔とは、意識を保ったまま部分的に痛みを麻痺させる麻酔です。歯科で使われる局所麻酔には、浸潤麻酔と伝達麻酔というものがあります。
一般的な麻酔というと浸潤麻酔のことを指し、幅広い歯科治療に用いられます。患部付近の歯肉に注射し、狭い範囲を麻痺させます。
伝達麻酔は、浸潤麻酔では届きにくい骨の厚い部分の麻酔に用いられます。神経に直接注射するため広い範囲に効果が及び、主に下顎の親知らずの抜歯などに用いられます。
歯茎や骨が薄い子どもの場合、大人よりも麻酔が効きやすいので通常の半分の量を注射します。また、浸潤麻酔や伝達麻酔は注射器を使用するため、事前に塗るタイプや噴射タイプの表面麻酔を施して、できるだけ挿入の痛みや恐怖を抑えることもあります。

全身麻酔

全身麻酔とは、完全に意識を失わせる麻酔方法です。眠るように意識を失い、手術中の記憶はまったく残らないため、痛みや不快さを感じることはありません。大人しく治療を受けることが難しい小児に有効な方法です。
しかし、全身麻酔中は呼吸が止まるため人工呼吸が必要となります。また手術中は麻酔科医が心電図や血圧を測りながら全身の状態を管理するなど、万全のバックアップ体制が必要です。一定水準以上の設備を備える歯科医院でないと受けることはできません。

精神鎮静法

小児は、歯科診療だけでなく、その前に行う麻酔に対しての恐怖心が大きく、治療を円滑に進めるためには精神的なケアが重要になってきます。ショックが大きいとトラウマになってしまい、将来的にも歯科恐怖症につながってしまうこともあるのです。
治療に対する精神的な負担を少なくするために行われるのが、吸入鎮静法や静脈内鎮静法です。
吸入鎮静法は笑気ガスという麻酔ガスを吸い込む方法です。ガスには鎮静作用があり、治療の恐怖感や緊張を抑えることができます。静脈内鎮静法では、点滴によって静脈内に麻酔剤を注射していきます。すると意識が朦朧とし、半分眠ったような状態で治療を受けることができます。
これらの精神鎮静法は、補助麻酔として局所麻酔と併用して行われます。

局所麻酔で起こりうる4つの全身的偶発症

医療行為には常にリスクが伴い、予期せぬことが起こりうるものです。歯科診療は侵襲性が高い分野ですので、そのリスクも高いといえます。このような一定の確率で起こる有害な症状を偶発症といい、リスクを減らすための予防はどこの医院でも行われているはずです。
局所麻酔で起こりうる全身的偶発症として下記の4つがあり、それぞれに予防法や対処法があります。局所麻酔は意識を保ったまま行われるため、全身的偶発症の多くは、歯科治療に対する不安感や恐怖感が原因となって起こっています。特に小児の場合、精神面への影響は非常に大きく、特別な配慮が必要となります。

神経性ショック

麻酔に対する精神的恐怖と、注射器挿入の痛みによる肉体的ストレスにより、自律神経が乱れ血圧や心拍数が急降下して、失神やめまいを起こしてしまうことがあります。
前兆として、めまい、視野のブレ、発汗、頭痛、吐き気、顔面蒼白などの症状が起こります。
予防法
吸入鎮静法や静脈内鎮静法などの精神鎮静法を用いて精神的ストレスを、無痛的麻酔で肉体的ストレスを軽減することが大切です。麻酔の痛みをできるだけ無くすには、表面麻酔を併用したり、電動注射器、無針注射器を使用したりするなどの工夫が必要です。

過呼吸症候群

極度の緊張など精神的ストレスによって、過呼吸状態になってしまうこともあります。血中の炭酸ガス濃度が低くなり、息苦しさを感じ、過剰に呼吸を繰り返してしまいます。同時にめまいや動悸、手足のしびれや痙攣を起こすこともあります。
予防法
神経性ショックと同様に、精神鎮静法を併用するなど、精神的ストレスをできるだけ取り除くことが大切です。

中毒反応

麻酔薬の過剰投与によって、めまい、嘔吐、頭痛、痙攣、意識の消失、最悪の場合心停止などの中毒反応を起こすことがあります。
予防法
麻酔薬の投与量に気をつける必要があります。また麻酔薬の注入が早いと、血流の逆流が起き、中毒症状も起きやすくなってしまいます。電動注射器などを用いて速度を調整することで防ぐことができます。

麻酔アレルギー

麻酔薬の量関係なく、アレルギー反応によってアナフィラキシーショックを起こしてしまうことがあります。蕁麻疹などの皮膚症状から、嘔吐・失禁などの消化器症状、呼吸困難や気管支痙攣などの呼吸器症状、血圧の低下や失神・心停止まで、起こりうる症状は多岐に渡ります。
予防法
小児の麻酔は、初めての経験となることも多いため、麻酔をして初めてアレルギーがあることに気づくということも起こりえます。初回には必ず事前のアレルギー検査が必要です。検査には時間がかかるため、麻酔の伴うような治療は、次回以降に行われることになります。
またアレルギー検査では異常がみられなくても、予期せぬ全身症状に備えたAEDなどの救急機器の整備が求められます。

精神面と全身管理が必要なことも

小児への局所麻酔は、精神面への配慮が求められます。また、身体的にも未発達であり、呼吸困難、脱水症状、低酸素症を起こしやすいという点でも注意が必要となります。特にラバーダムや開口器を使用している際には気道が狭まりやすいため、パルスオキシメーターを使用するなどして、呼吸・循環のモニタリングを行うことが有用となってきます。
また、そもそも治療のリスクを低くするためには、第一に虫歯予防です。感染の窓と呼ばれる1歳半~2歳半の時期には虫歯菌に感染しないよう、大人と食器の共有や過度なスキンシップをしないなど、保護者の配慮が必要です。