嫌な患者でも診療拒否できない!歯科医師の応召義務とは? | 歯医者の選び方 | 歯医者がおすすめする歯科医院
2018年2月5日

医師や歯科医師は、患者からの診療の求めがあった場合には、かなりハードルの高い正当な事由がない限り、拒否してはいけません。患者からの呼び出しがかかってしまうと、たとえ冷蔵庫からビールを取り出した瞬間でも、それを我慢して診療を行わなければならないのです。
今回は、医師や歯科医師が抱える応召義務について紹介します。

応召義務とは

歯科医師法19条には、「診療に従事する歯科医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」という決まりがあります。これを応召義務といい、歯科医師は正当な事由がない限り、患者の診療を断ることができないとしています。
応召義務は、医療の公共性や業務独占という性質から認められた義務であり、歯科医師だけではなく、医師や助産師、薬剤師にも同様の義務が定められています。

応召義務違反のペナルティ

応召義務に違反した場合、何らかの罰則が定められているわけではありませんが、民事上、行政上の責任を負うリスクがあります。
まず民事上の責任は、患者が重篤化または死亡してしまったなど、受け入れを拒否したことで何らかの損害を与えた場合に発生する可能性があります。患者や家族から訴えられて、受け入れ拒否と症状悪化の因果関係が認められると、治療費や慰謝料といった損害賠償を請求されることになります。
さらに、何度も応召義務に違反すると、歯科医師としての品位を損ねる行為であるとして、歯科医師免許の停止や取消、戒告の行政処分を受ける可能性もあります。応召義務違反は、行政処分が下される理由の一つとして挙げられているのです。

応召義務の例外となる正当な事由とは

歯科医師の応召義務の例外として認められるかどうかは、正当な事由の有無が関わってきます。正当な事由の内容について明示する規定はないため、個別のケースによって該当するかどうかが都度判断されていくことになります。
具体的には、歯科医師、患者、医療環境の3つの事情を考慮して、総合的に判断されます。

歯科医師側の事情

1.歯科医師の不在や体調
不在である、病気にかかっている、泥酔状態であるなど、歯科医師の診療が事実上不可能な状況であれば、正当な理由として認められる可能性が高いでしょう。無理に診察を行って医療事故を起こしてしまえば、かえって患者の不利益になってしまいます。
ただし軽微な疲労や酩酊状態という理由だけでは正当な事由にはならず、歯科医師側の事情においては応召義務の例外はかなり狭い範囲で解釈されています。

2.専門外
専門外であることを理由に拒否をした場合には、患者が了承する分には問題ありませんが、その場合でも出来る範囲の応急処置を行う必要があります。後に記載している患者の容態や地域の医療環境によっても状況は変わってきます。

患者側の事情

1.患者の病状と緊急性
患者が生死に関わるような緊急を要する容態にあるかどうかが考慮されます。緊急性が高ければ高いほど、放置で被る患者のリスクは高くなり、その分歯科医師による診療拒否の責任も大きくなってしまいます。
ただし歯科は、痛い歯を今すぐ治してほしいという急患は多く現れるものの、医科と比べると生死にかかわるようなケースは稀なため、応召義務違反となるリスクは少ないといえます。
例えば、診療時間外や予約が空いていない時間に診療を求められた場合、救命措置が必要な状態でない限りは、予約患者を優先したり、別の対応可能な歯科医院を紹介したりすることは、応召義務違反とはならないでしょう。 万が一歯科医院に生死に関わるような急患が現れた場合には、出来る限りの処置を行わなければなりません。ただし医科に抵触するような医療行為はできないため、専門施設への搬送を手配するといった対応が求められます。

2.問題行動のある患者
患者の行為に刑事上の問題が発生するような場合にも、緊急の場合を除いて診療拒否が正当な事由として認められることがあります。例を挙げると、暴力、脅迫、業務妨害、迷惑防止条例違反などが該当する事例です。
また一度の診療費の未払いだけでは、診療拒否の正当な事由にはなりません。しかし何度も繰り返すような常習犯であれば、初めから支払いの意志がないがないものとみなせますので、診療拒否の正当な事由として認められることもあります。ただし前述の通り、患者の容態によっても変わってきます。

医療環境

1.地域の医療環境
歯科医院の付近に、専門医や休日・夜間の診療体制の整っている病院があるかどうかも影響を及ぼします。周囲に別の適した医院があり、そこで受診するよう指示をすることは、応召義務に違反する行為とはいえません。
周囲に他の医療施設がない場合には、やはり出来る限りの応急処置を行い、専門医療へ引き継ぐまでの診療対応が必要です。

休日急患歯科診療所
休日や夜間に急に歯が痛くなった場合には、各地域にある休日急患歯科診療所で治療を受けることができます。あくまで一時的な応急処置となりますので、その後の治療についてはかかりつけの歯科医院へお願いしなければなりません。休日急患歯科診療所についての情報は、各自治体や地域の歯科医師会ホームページなどから探すことができます。

2.診療の場所
応召義務に定められている「診療に従事する歯科医師」とは、病院や診療所内で働く歯科医師と解釈されます。例えば、歯科医師としてではなくプライベートでたまたま乗り合わせた飛行機内でドクターコールがあった場合、これに応じないことで応召義務違反になることはないと考えられます。

まとめ

応召義務があるため、歯科医師は基本的には診療を拒否することができません。とはいえ無理して診療をして医療事故などを起こしてしまうと、賠償を負ってしまうリスクもあります。
患者は歯科医院を選べても、歯科医師は患者を選べません。ときにこの応召義務を逆手に取って、周りの迷惑を顧みず、無理矢理診療を求めるモンスターペイシェントが発生してしまうことがあります。
歯科医師と患者の良い関係は信頼の上に成り立ちます。自分は「お客様」であり、医療職の人は「当然治してくれる人」という意識を持ってしまうと、病気は治りません。病気は自分の努力で治すものであり、医者や歯科医師はリスクを抱えながらも全力でサポートしてくれる心強い味方です。敬意を持って接しましょう。
患者のマナーについては「モンスターペイシェントになってない?歯医者に行くときに気をつけるべき7つのこと」を御覧ください。