歯を削るリスクとは?治療中心から予防中心の歯科診療へ | 歯医者の選び方 | 歯医者がおすすめする歯科医院
2018年2月17日

人間の歯は、手足と同じように、一度でも失ってしまうと二度と生えてきません。虫歯などで歯を削ってしまえば、二度と元の形には戻りませんし、歯周病で永久歯が抜けてしまえば、二度と生えてくることはありません。歯の疾患は元には戻らない不可逆的な性質を持っています。
虫歯を取り除いた穴には人工の詰め物をしていくことになりますが、元の歯を完璧に再現することは不可能に近く、大抵のケースでは歯に悪い変化をもたらします。
今回は、歯を削ることで起こるリスクについて、従来の治療中心型の歯科診療の流れとともに紹介します。

従来の”削る”歯科診療に潜むリスク

虫歯などで一度でも歯を削ってしまうと、再度虫歯になるリスクは高くなります。虫歯治療は概ね下記の流れを辿ることになります。

従来型の歯科治療の流れ
1.虫歯になる
2.削って埋める
(1と2を繰り返す)
3.神経を抜く
4.クラウンを被せる
5.抜歯
6.部分入れ歯、ブリッジ、インプラント
7.総入れ歯

それぞれの詳しい解説と、起こりうるリスクについて紹介します。

1.虫歯になる

ごく初期の虫歯でない限り、虫歯になってしまった歯は再生しません。しかも虫歯になってしまった部分を綺麗に取り除かないと、腐った果物のように、どんどん虫歯菌の侵蝕が広がっていってしまいます。

2.削って埋める

削って埋めてを繰り返すうちに、自分の歯はなくなり、次に出来る虫歯はどんどん深い位置にできるようになります。
★虫歯の取り残し
削る際に虫歯を取り残してしまうと、二次カリエスの原因となります。詰め物や被せ物の下から再び虫歯が広がってしまうのです。
★詰め物の不適合
歯と詰め物の間に隙間ができると、その隙間から食べかすや細菌が入り込み、虫歯ができてしまいます。隙間ができる原因としては、治療の際に詰め物をピッタリと入れることができなかった、もしくは素材の経年劣化が考えられます。
また、詰め物を盛りすぎてしまったり逆に足らなかったりして高さが合わないと、噛み合わせがズレて、頭痛や肩こり、顎関節症の原因となります。

3.神経を抜く

やがて虫歯が神経(歯髄)にまで達すると、神経ごと取り除かなくてはならなくなります。根の神経が入っていた穴(根管)には、薬剤を充填していくことになります。
★感染歯髄の取り残し
歯根の形は人それぞれ異なっており、曲がっていたり複雑な形をしていたりすると、治療の難度も高くなります。感染した歯髄を見落としてしまい、少しでも感染した神経を取り残してしまうと、そこから再度感染が広がってしまいます。
★充填が緊密でない
根管内への薬剤の充填が不十分で少しでも空間が空いてしまうと、細菌が繁殖し再感染してしまいます。

4.クラウンを被せる

神経を抜いた歯は、詰め物では補えないほどに大きな穴が空きます。そこで今度はクラウンという被せ物を使って歯を修復していきます。
★被せ物の不適合
詰め物と同様に、被せ物の形が合わないと、再度虫歯になってしまったり、噛合せに不具合がでてしまったりすることがあります。また歯と歯茎の間にプラーク溜まりやすいと、歯周病になるリスクも高くなります。
★歯根破折
神経を抜いた歯(失活歯)は、健康な歯に比べると強度が落ちます。クラウンに偏った力がかかると、歯にヒビが入ったり割れてしまったりすることがあります。多くのケースで抜歯となってしまいます。
★歯周疾患
根の再感染を繰り返すと、根の先が膿んできて、歯を支える骨が吸収されてしまいます。また、加齢やクラウンの不適合により、歯周病を起こすこともあります。今度は歯の内部だけでなく、歯周組織へ細菌感染が広がってしまいます。

5.抜歯

歯周組織への細菌感染や歯根破折など、様々な理由で歯を残せなくなり、ついに抜歯となります。

6. 部分入れ歯、ブリッジ、インプラント

少数の欠損歯の機能を取り戻す方法には、部分入れ歯、ブリッジ、インプラントの3つの選択肢があります。
★欠損を放置
歯が抜けたまま放置をすると、徐々に歯肉が後退し、両隣の歯も動いてスペースが埋まっていってしまいます。また、対合歯も噛み合う歯が無くなることで、どんどん伸びてきてしまいます。いざ治療しようとしたときに、歯肉が足りない、歯を入れるスペースがないなど問題が出てきてしまいます。
★隣接歯への影響
保険の部分入れ歯は、隣接歯にクラスプという金属を引っ掛けることで義歯を支えます。クラスプを引っ掛けた隣接歯が金属によって変色してしまったり、清掃性の問題で虫歯になってしまったりすることもあります。
ブリッジは、隣接歯を削って支台にして固定します。これにより隣接歯は、上記の「4.クラウンを被せる」まで一気に工程が進んだことになります。
★インプラント周囲炎
インプラントのメインテナンスを怠ると、インプラントの周囲に炎症が起こり(インプラント周囲炎)、インプラントが動揺したり抜け落ちたりしてしまうことがあります。

7.総入れ歯

欠損歯が多くなると、最終的には総入れ歯へと行き着きます。
★歯茎の後退
歯がない状態が続くと、歯茎が全体的に後退してきてしまいます。入れ歯が合わなくなり、噛んだときに痛みが発生するようになります。咀嚼能力や嚥下機能が落ちて、胃腸の不調や食欲の減退を招きます。また、顔貌もハリが無くなり老いて見えるようになります。
★誤嚥性肺炎
総入れ歯を利用する人の多くは高齢者です。口腔内のケアを自分でできなくなると、口内の細菌が気管に入り込んでしまう誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。特に寝たきりの高齢者に多く、最悪の場合には死に至ります。

削らないこれからの歯科診療

歯を削ることは、不可逆的な行為です。一度でも削ってしまえば、その歯はゆっくりと従来型の治療のレールに乗ってしまいます。もちろん、腕の良い歯科医師の先生であればあるほど、10年、20年単位で進行を遅らせることも可能です。しかしもっと前の段階で、そもそも削らないようにしてくれる診療があれば、10年、20年とはいわず、一生自分の歯を残すことができるようになります。
削らなくて済む診療方法、それは「予防」ただひとつです。歯科医院に通う目的を治療ではなく予防にすることで、従来の診療ルートを辿らずに済みます。歯科に限らず言えることですが、予防は患者の生活習慣に大きく関わってきます。そのためにも、自分(患者)のことをよく知る、定期的に通えるかかりつけの歯科医の存在は必須となってきます。
特に国の施設基準を満たす、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)では、虫歯や歯周病の重症化予防のための保険診療が用意されています。あくまで保険で賄えるのは重症化予防に留まりますので、疾患名が付かない場合には自費診療となります。

か強診による虫歯や歯周病重症化予防の診療

対象 初期虫歯の患者 歯周病安定期の患者
診療名 エナメル質初期う蝕管理加算
(歯科疾患管理料への加算)
歯周病安定期治療(II)
費用
(3割負担)
780円 ・1~10歯未満 1,140円
・10~20歯未満 1,650円
・20歯以上 2,490円
内容
(必要に応じて実施)
・フッ化物歯面塗布
・口腔内カラー写真撮影
・プラークコントロール
・機械的歯面清掃
・フッ化物洗口指導
・プラークコントロール
・歯周基本治療
・歯周疾患処置又は歯周基本治療処置
・口腔内写真
・歯周病検査
・機械的歯面清掃処置
・咬合調整
診療頻度 月に1回 月に1回

平成29年4月時点で、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所として届け出を行っている歯科医院は、歯科診療所全体の10%程度と、まだまだ少ないのが現状です。か強診に限らず、自分の歯を守るためには信頼できる歯科医院を見つけることが大切ですね。