痩せた歯茎を再生する「歯周組織再生療法」の意外に少ない適応症 | 歯医者の選び方 | 歯医者がおすすめする歯科医院
2018年3月1日

iPS細胞の再生医療への実用化が進む中、歯科の分野でも再生医療の研究が盛んに行われています。最近では岡山大学の研究グループが、大型動物である犬の歯の再生に成功し、人の歯の再生に向けての大きな一歩となりました。
歯の再生はまだですが、歯周組織の再生は保険診療として取り入れられているように、多くの歯科医院で行われています。歯周組織は歯や人工歯を支える大切な組織であり、歯周再生療法によって、より長く歯を残せるようになったり、インプラント治療の可能性を広げたりすることができます。
しかし歯周再生療法はどんな場合にも行えるわけではなく、ある程度骨が残っていることが必要です。歯周病が重度になるほど、治療できなくなる可能性も大きくなります。
今回は、歯周再生療法の概要や適応症について紹介します。

歯周組織再生療法

歯周組織再生療法は、歯周病などで失った歯根膜、セメント質、歯槽骨といった歯周組織の修復を促す治療法です。歯茎に炎症を起こすと、歯周組織がどんどん吸収されていき、やがて歯茎の凹凸が失われます。凹凸がないと歯を支えられなくなるだけでなく、インプラントでの修復も難しくなります。
一度失った歯茎の厚みは自然に元には戻りません。元通りとまではいかずとも可能な範囲で回復していくのが、歯周組織再生療法です。歯周病そのものを治療する効果はなく、従来通り歯周外科手術でプラークや歯石を除去した後、口腔機能や見た目回復のために行われます。
万能な方法にも思える歯周再生療法ですが、適応症は限られています。主に骨の欠損の状態をみて、治療が可能か判断されることになります。

骨欠損の仕方

歯周組織再生療法の適応症であるかは、歯周ポケットの測定やレントゲン上で確認できる骨の欠損状態によって判断されます。骨の欠損状態は、大きく分けて水平性骨欠損と垂直性骨欠損に分けることができます。歯周再生療法に適しているのは、後者の垂直性骨欠損となります。

水平性骨欠損 歯の周囲の骨が全体的に吸収されている状態。いわゆる歯茎下がり。一般的な歯周病で起こりやすい。
垂直性骨欠損 特定の根面の骨だけ吸収されている状態。歯根の一部が露出している。根から炎症が広がる根尖性歯周炎や咬合性外傷で起こりやすい。
吸収が起きている根面の数によって、さらに下記の4種類に分類される。残っている骨壁が多いほど改善が見込める。
1壁性骨欠損:骨欠損の周囲に一面しか骨壁が残っていない状態
2壁性骨欠損:骨欠損がニ面の骨壁に囲まれている状態
3壁性骨欠損:骨欠損が三面の骨壁に囲まれている状態
4壁性骨欠損:歯根の全面が骨壁で囲まれている状態

下記で、現在行われている歯周組織再生療法について紹介します。

GTR法(組織再生誘導法)

GTR法は歯周病によって失った歯根膜、セメント質、歯槽骨の再生を促す治療法です。減ってしまった骨欠損部分が増殖の早い歯肉部分で埋まらないように、メンブレンという膜を骨欠損部と歯肉の間に設置して、骨や歯根膜が再生するスペースを確保していきます。
メンブレンには自然に吸収するものとしないものがあり、しないものについては、摘出するための二次手術が必要です。非吸収性のメンブレンは摘出するまでなくならないため、確実にスペースの確保ができるというメリットはありますが、二次手術で患者への負担が大きくなるというデメリットがあります。現在日本で認可されているメンブレンは吸収性のものだけとなっています。
GTR法は適切に行われれば予知性の高い方法であり、2008年より保険適用となっています。ただし保険適用の認可が降りているメンブレンのメーカーは限られているため、すべての歯科医院で保険適用となるわけではありません。また、治療の難度が高いため、成功するかは歯科医師の技術に委ねられます。
適応症
下記のような症状が伴う中程度~重度歯周病患者に用いられます。
● 2壁、3壁性の垂直性骨欠損
● 2級の根分岐部病変(歯根の付け根に探針が1/3以上入るが貫通しない状態)
● 一般的な歯周病に多い水平性骨欠損は適応症ではない

GBR法(骨再生誘導法)

GBR法は、GTR法を応用した方法で、インプラント治療で骨の量が足りない際に行われます。つまり治療の対象となるのは抜歯後の歯周組織です。
GTR法のようにメンブレンを骨欠損部と歯肉の間に設置しますが、インプラントなので歯根膜の再生は必要なく、欠損部分には自家骨や人工の骨補填材を詰めていきます。メンブレンで蓋をし、その上から歯肉を被せていきます。数ヶ月で新しい骨ができます。
GBR法については保険適用外となります。
適応症
インプラント治療時に、下記のような状態が見られる場合に行われます。
● 無歯部の垂直性、水平性骨欠損
● 歯茎の高さを得るのは難しい

歯周外科治療におけるバイオ・リジェネレーション法(エムドゲイン法)

「歯周外科治療におけるバイオ・リジェネレーション法」とは、エナメルマトリックスデリバティブ(EMD)という歯の発生時に重要な働きをするタンパク質を応用した方法であり、2007年に先進医療として認められています。
術法に使用する「エムドゲインゲル」とは、ブタの歯胚から抽出したEMDを元に精製した歯周組織再生用材料の商品名を指します。このエムドゲインゲルを、歯周外科手術で露出した歯根部に塗布することで、歯周組織の再生を促すことができる、というものです。
先進医療は保険診療と同時に受けられる自費診療(混合診療)のことをいいます。従って、エムドゲインは保険外の治療法です。
適応症
下記のような症状が伴う中程度~重度歯周病患者に用いられます。
● 歯周ポケット(PPD)が6mm以上
● 深さ4mm以上、幅2mm以上の垂直性骨欠損
● 水平性骨欠損や根分岐部病変には適応しない

リグロス(トラフェルミン)

リグロスとは、2016年より保険適用となった歯周組織再生用剤の新薬の名前です。遺伝子組換え技術により製造したbFGF(ヒト塩基性線維芽細胞増殖因子)を薬効とする、世界初の歯周組織再生医薬品と広告されています。
エムドゲイン法と同様に用いられ、歯周組織の再生を促すことができます。
適応症
下記のような症状が伴う中程度~重度歯周病患者に用いられます。
● 歯周ポケットが4mm以上
● 深さ3mm以上の垂直性骨欠損
● 水平性骨欠損や根分岐部病変には適応しない
● インプラント治療に関する有効性及び安全性は確立していない

まとめ

歯周再生療法は、垂直性骨欠損を修復する、つまり歯茎の厚みを足すのは得意ですが、水平性骨欠損の修復、つまり歯茎全体の高さを増やすことは苦手であることがわかりました。
一般的な歯周病の多くは水平性骨欠損が起こりますから、必ずしも歯周再生療法が有効であるとはいえないのです。 くれぐれも歯周再生療法があるから大丈夫などとは考えずに、適応症であればラッキーという程度の期待度にしておくのが良いでしょう。今ある歯や歯茎を全力で守っていくことが何よりも重要です。