放置は危険!入れ歯が合わないと起こる9つの症状 | 歯医者の選び方
2018年5月7日

入れ歯が合わないと、痛みや不快感で思うように食事や会話ができなくなってしまいます。入れ歯の不適合はQOLを大きく損なわせる問題ですが、使っている本人はその不便さに慣れてしまい、気づかぬ内に様々な口内トラブルを招いてしまっていることがあります。特に高齢者は神経の感覚も鈍くなっているため、命にかかわるほど症状の悪化を許してしまっていることも。
ついつい合わない入れ歯を放置していませんか?入れ歯の不適合で起こる、危険な9つの症状について紹介します。

入れ歯の不適合で起こる症状

入れ歯が合わないことで起こる口内トラブルとして、次の9つが挙げられます。

口腔乾燥

大きすぎる入れ歯が唾液腺を塞ぎ口腔乾燥を招いてしまうことがあります。また舌の動きが阻害されたり、よく噛めなかったりするため、唾液の分泌を妨げてしまうこともあります。
口腔乾燥は、入れ歯の劣化を早めたり、口内の粘膜を傷つきやすくしてしまったりします。下記に挙げている義歯性線維腫や義歯性潰瘍、義歯性口内炎のリスクを高めてしまうのです。

骨の吸収

歯がないと自然に歯槽骨は吸収されてしまいますが、入れ歯が歯茎に強く当たることで、さらに歯槽骨の吸収は早まってしまいます。歯槽骨が吸収されると歯茎の凹凸がなくなり、入れ歯も外れやすくなってしまいます。
逆に適合の良い入れ歯は歯槽骨を守り、経年吸収を遅らせることができます。

健康な歯を傷つける

部分入れ歯は、健康な歯にクラスプという金属を引っ掛けることで固定します。入れ歯が合わないと咀嚼する度に動いてしまい、支えとなっている歯への負担も大きくなります。

義歯性線維腫(ぎしせいせんいしゅ)

合わない入れ歯による粘膜への慢性的な刺激により、粘膜が肥大してポリープのようなものができる症状を、義歯性線維腫といいます。好発部位は、上顎の前歯部分や入れ歯の縁が当たりやすい箇所です。
義歯性線維腫は、正常な組織と同じ色をしている半球状の柔らかい膨らみで、痛みはありません。しかし入れ歯の安定を阻害してしまうため、切除した上で、入れ歯の再調整が必要となります。

義歯性潰瘍

合わない入れ歯によって舌や歯肉、粘膜が擦れたり圧迫されたりし続けると、血流が阻害されて、やがて組織が壊死してしまいます。組織が壊死すると潰瘍が形成され、周囲の組織が灰色かかった黄色に変色し、盛り上がったようになります。
この口腔粘膜の床ずれともいえる症状を、褥瘡性潰瘍(じょくそうせいかいよう)といいます。自発痛はありませんが、触ったり刺激物を食べたりすると痛みます。
原因となっている刺激物、つまり入れ歯を取り除けば、1~2週間程で治りますが、放置すると口腔癌の原因となります。

義歯性口内炎(紅斑性カンジダ症)

入れ歯が原因でできる口内炎です。入れ歯の機械的刺激や、金属やレジンの化学的な刺激、口内の細菌増殖によって粘膜にできものができます。
義歯性口内炎で代表的なものが、紅斑性カンジダ症です。紅斑性カンジダ症になると入れ歯が触れるだけで痛むため、多くのケースで入れ歯が合っていないと勘違いしてしまいます。しかし実際の原因は、入れ歯の清掃不良です。入れ歯を不潔にするとカビの一種であるカンジダ菌が繁殖し、入れ歯と接触する粘膜に炎症を起こします。
一般的なカンジダ症(急性偽膜性カンジダ症)は白苔が口腔内全体に広がり、痛みが比較的少ないのが特徴ですが、紅斑性カンジダ症は赤くただれてヒリヒリとした痛みを発します。また口角炎も同時に発生することが多いのも特徴です。
治療は、薬剤の投与が中心となります。入れ歯に抗真菌薬を塗布して、そのまま口内に装着します。しばらくおいた後に、入れ歯を洗浄します。2週間ほど投与を続けることで改善することがほとんどです。

フラビーガム

合わない入れ歯を装着し続けると、歯茎の凹凸部分がこんにゃく状の柔らかいフラビーガムという状態になってしまうことがあります。フラビーガムは、長期的な機械的刺激によって歯槽骨が吸収され、粘膜が肥大することで生じます。好発部位は上顎の前歯部分です。
歯茎にフラビーガムが形成されてしまうと、入れ歯を入れてもブヨブヨと動いてしまうので、噛むとすぐに脱離してしまいます。 フラビーガムを元の状態に治すことは難しく、外科的に切除してしまうか、型を取り直してフラビーガム部分に接触しないような入れ歯を再度作成するしかありません。

顎関節症

入れ歯が合わないとかみ合わせがズレて、顎関節に負担をかけてしまいます。合わないまま使い続けると顎関節症になり、口が開きづらくなる、頭痛や肩こり、手足のしびれなどの症状が現れます。食事や会話のしづらさや身体の不調により、大きな精神的ストレスを抱えてしまうこともあります。
ズレてしまったかみ合わせの治療や、原因となっている入れ歯を精密に作り直すことで症状が改善します。

扁平上皮がん

口腔内に出来るがんで、最も多いのが扁平上皮がんです。扁平上皮がん発症の危険因子の一つとして、入れ歯の不適合が挙げられます。入れ歯による長期的な粘膜への刺激や不衛生な状態が原因になると考えられています。
白色や赤色の病変ができ、中心には潰瘍やびらんが認められます。また触ると硬いしこりを感じます。また、入れ歯を調整したり薬剤を塗布したりしても2週間以上治らない病変は、がんである可能性があります。
プロでも見逃してしまうことがあるため、上記に該当するような症状がある場合には、積極的に歯科医師に訴えることが必要です。
治療は外科的切除手術や放射線治療を行っていきます。初期がんであれば9割以上の治癒が見込めますが、進行がんになると7割~4割に生存率が下がります。がんは早期発見が大切な病気です。

入れ歯を作り直す際の注意

入れ歯が合わなくなる原因として、大きく次の4つのことが考えられます。1つ目はそもそも入れ歯が合っていない、2つ目は長年の使用による入れ歯の変形、3つ目は骨の吸収による歯茎の形が変わり合わなくなった、4つ目は粘膜の痛みで入れ歯が合わないと感じてしまうということです。
4つ目の粘膜の炎症については、入れ歯の徹底した清掃や薬物塗布によって改善しますが、残りの原因については、入れ歯を作り変える必要があります。入れ歯の作り直しは、保険を使う場合と使わない場合で条件が変わってきます。

保険で作り直す

保険適用で作った入れ歯を再度保険で作り直す場合には、前回作成時から6ヶ月以上間を空けなければなりません。歯科医院を変えても制限はリセットされません。10割負担であれば時期関係なく作ることができます。
保険で作れる入れ歯は片顎1万円前後と安価ですが、部分入れ歯であれば金属のクラスプがついていますし、総入れ歯であればプラスチック樹脂を使った厚い作りの入れ歯に選択肢が限られてしまいます。
適合が良い入れ歯にしたいのであれば、バリエーションの富んだ保険外の入れ歯の方が、自分に合う入れ歯が見つかりやすいと言えます。

保険外で作り直す

保険外の入れ歯であれば、保険適用の入れ歯のように時期の縛りもなく作り直すことができます。ただし費用は、歯科医院によって価格設定が変わるためピンきりですが、20~50万ほどかかってしまいます。 種類は様々あり、周囲の歯への負担が少ない部分入れ歯であれば、クラスプを使用しないノンスクラプデンチャーやテレスコープデンチャーなどがあります。 残存歯やインプラントを使って総入れ歯を固定する、オーバーデンチャーという方法もあります。粘膜への接触が少なく、より固定力の強い入れ歯を作ることができます。

入れ歯安定剤

作り直しまでの一時的な処置として、入れ歯安定剤の使用も有効です。痛みは軽減されますが、根本的な解決にはなりません。長期的な使用により、今度は別の箇所に痛みなどのトラブルが発生する可能性があります。また入れ歯安定剤は粘着性が高いため、清掃性に問題が出てくることもあります。
合わない入れ歯は、できるだけ早期に歯科医院で作り直しましょう。

慣れが必要なことも

入れ歯初心者は、慣れるまでが難関と言われています。口内に異物が入っているのですから、最初は誰でも違和感があるものです。慣れていないのか、本当に合っていないのか、その判別は辛抱強く使ってみることでしかわかりません。
慣れるまでには、だいたい1ヶ月ほど様子を見る必要があります。その期間は通院を怠らずに、歯科医師と二人三脚で調整していかなければなりません。
またどんなに質の良い入れ歯であっても、自分の歯と同じ感覚では使えないのは事実です。今ある歯を大事にすることが、何よりも大切です。