刑務所の中で虫歯になると地獄・・・治療は数ヶ月待ち? | 歯医者の選び方 | 歯医者がおすすめする歯科医院
2018年5月30日

刑務所の中で歯が痛くなっても治療を受けられるのは数ヶ月先、ということは珍しくありません。そんな過酷な環境から、受刑者は食後の歯磨きを念入りに行うなど歯の健康には一層気を遣うそうですよ。
今回は刑務所の中の歯科医療事情について紹介します。いつでも歯医者に行けることって、こんなにも幸せなことなんですね。

刑務所の中で歯科治療を受けるには

普通、急に歯が痛くなったときには、その日のうちに歯科医院に駆け込んで治療を受けることができますよね。しかし刑務所の中では様々な自由が制限されているため、同じようにはいきません。医療についても例外ではありません。

「願箋」で診療依頼

受刑者は「願箋」という申請書に様々な願い出を書いて提出することで、私物の購入や面会の希望、医療受診などができるようになります。
歯科治療受診の申し出も「願箋」を通して行われます。しかしすぐに診療が叶うわけではなく、実際に診療が行われるのが数ヶ月先になってしまうこともあるようです。また刑務所内では詐病を訴える受刑者も多いため、診療を行うべきかは慎重に判断されます。

なぜすぐに治療してもらえないのか

どこの刑務所も常に数十人以上の予約が入っている状況で、月単位の診療待ちが必要となることもあります。違法薬物を長年使用してきた受刑者は、歯に問題を抱えていることが多いため、刑務所の中の歯科診療のニーズは必然的に高くなるようです。 加えて常勤の歯科医師は少なく、週に1~2回など診療機会が限られていることも、永遠と続く順番待ちの原因となっています。需要と供給が一致していないのですね。
歯科の治療は緊急性が低いとして、軽視されがちなのかもしれません。ただし腫れが酷く、食事もできないような状況の場合には、優先して治療が受けることができるようです。

国費負担

受刑者は健康保険に入っていないため、治療に保険が使えません。その代わり刑務所の中の医療費は国費で賄われます。歯科についても同様で、限られた診療内容ではありますが、無料で診療を受けることができます。

刑務所の中で受けられる治療

刑務所の中で受けられる診療内容は、大きく制限されます。国費で賄われていることや、医療設備や歯科医療スタッフが十分に整っていないことが理由として挙げられます。

診療までは鎮痛剤の支給

治療を受けられるまでに数ヶ月かかることもありますから、それまで歯の痛みはひたすら鎮痛剤で抑えることになります。我慢あるのみです。診療を受ける頃には神経が死んでしまっていて、すでに痛みもないために診療予約していたのを忘れているということも。
とにかく期間が空きすぎて診療時にはかなり悪化してしまっていることは常のようです。全員が必ず診療を受けられるわけではなく、ちょっとした歯の痛みだけでは鎮痛剤で済まされることもあります。

基本は一回で終わる治療

刑務所内で行われる診療は、基本的に一回で終わる抜歯が中心となります。根の治療や補綴物の型取りなど、数回の処置が必要になる治療は行われません。
神経に達していない虫歯であれば、削って詰め物をして終わりです。ただし詰め物は仮のセメントが使用されるため、長くは持ちません。結局は再治療が必要になるため、手っ取り早く抜歯してしまうことが多いようです。刑務所に入る前に歯医者だけには行っておけ、と刑務所経験のある人はみな口をそろえて言うそうです。
自費で入れ歯などの補綴物を作ることはできますが、数十万以上かかることもあるため、経済的に余裕のある受刑者でないと難しいでしょう。
刑務所の中では現金を持てないので、領置金という施設に預けている手持ちのお金から支払われます。私物の購入時も領置金から精算されます。預けられる上限はなく、家族からの差し入れによって補充することができます。領置金の残額は、出所時に全額返還されます。

難しい症状は外部医療機関で

歯茎に埋まった親知らずの抜歯など、難しい処置が必要な場合には、提携している外部の医療機関で治療が行われます。手錠と腰縄付きの厳重な監視の中で行われますが、一般の患者に配慮して、時間外に診療が行われることが多いようです。診療が許可されるハードルはかなり高く設定されています。
外部の医療機関で行われた場合でも、国費での負担となります。自由診療扱いなので、同じ治療内容でも受け入れ先によって治療費が変わってきます。より安く済む医療機関を選ぶという感覚はなく、いつも同じところが選択されているようです。そもそも提携している医療機関の選択肢が少ないこともありますが、さほど経済性が重視されずに病院が選択されていることが問題になっています。

実費の指名医制度

下記の条件を満たし所長の許可が下りれば、自費で外部の歯科医師を呼んで診療を受けることも可能です。ただし弁護士を間に挟んで交渉を行うなど、こちらも実現するハードルは高いようです。

外部の医療機関に依頼できる条件
1.ケガや病気を現に有していること
2.診療を受けたい歯科医師の氏名等を具体的に特定していること
3.その刑務所内での診療が可能なこと
4.ケガや病気がその刑務所で行っている診療では対応困難なものであること
5.指名しようとする医師が診療を承諾していること

誰が治療を行っている?

刑務所内で働く常勤の医療スタッフを矯正医官といいます。矯正医官は外科や内科の先生が中心であり、歯科医師は提携医院から派遣されてくるケースがほとんどです。
矯正医官は国家公務員という位置付けですが、慢性的に人員が不足しています。刑務所内は医療設備が限られており、簡単な処置しかできません。また最新の医療を学べる機会が少なく、特殊な環境から精神的な負担も大きいため、医師や歯科医師にとって魅力が少ない職場のようです。
刑務所の外では歯科医師の過剰が騒がれていますが、足りていないところは足りていないのですね。医療費が国費で賄われていることもあり、そう簡単には増やせないのかもしれません。中々難しい問題ですね。