上下で違う?親知らず抜歯の痛みについて | 歯医者の選び方 | 歯医者がおすすめする歯科医院
2017年6月13日

上下セットで抜歯されることも多い親知らずは、上下で抜歯の痛みが違うといわれます。手術時間も下の親知らずの方がかかり、難抜歯となることも多くなります。同じ抜歯なのに、なぜ上下で違いが出るのでしょうか。
また上下セットで抜いた方が良いとされるのはなぜなのでしょうか。親知らずの上下の痛みの違いの理由や、痛みの原因についてまとめました。

親知らず

親知らずは上下セットで抜いた方が良い?

親知らずは、基本的に上下セットで抜いた方がよいと判断されることが多く、上下一方を抜歯した場合、もう一方の親知らずに問題がなくても抜歯してしまうことがあります。
上下セットで抜いてしまった方が良い理由として、下記が挙げられます。

片方の歯が伸びてくる

上下一方の親知らずを抜歯した状態で放置すると、噛み合わせの対合歯が伸びてきてしまい、歯茎や頬を傷つけてしまったり、隣接歯との隙間に虫歯ができやすくなってしまいます。

噛み合わせが悪くなる

上下一方の親知らずがなくなることで噛み合わせが悪くなる恐れがあります。噛み合わせのバランスが崩れると、顎に負担がかかり顎関節症になったり、頭痛や肩こりにも繋がってしまいます。

将来的なリスクを避ける

悪い芽は早いうちに摘んでおくというように、親知らずが将来的にもたらす問題を事前に避けるために、通院の機会を利用して上下とも抜いてしまうケースもあります。
親知らずは一番奥に生えているということもあり、歯ブラシが届きにくく汚れが溜まりやすい箇所になります。念入りにブラッシングを行わないと、隣接歯を巻き込む虫歯を作ったり、歯茎が腫れて痛みを起こしたりする可能性があります。
ただし生え方に問題のない親知らずは、他の箇所への移植のために保存しておくこともあります。虫歯や歯周病で失ってしまった歯の代わりに、自分の親知らずを移植して根付かせることができるのです。又はブリッジの支台歯としても活用することができます。
他の歯に何の問題も見られないような場合には予防的に抜歯、歯の本数が足りなくなる場合には保存して活用するといったように、親知らずを抜くか残しておくかは口内の状況によって判断されます。

上の親知らずの抜歯

上顎の親知らずの抜歯は下顎に比べると痛みが少なく、時間もかからない傾向にあります。

骨が柔らかい

上顎の骨の密度は下顎よりも低く、歯槽骨が柔らかいために抜歯もしやすくなります。

麻酔が効きやすい

上顎は麻酔も効きやすく、通常の虫歯治療にも使われる浸透麻酔で済むことが多くなります。麻酔が行き渡らずに術中に痛みを感じることも少なくなります。

見えにくい

上の奥歯は見えにくい箇所なので、口を大きく開けなければなりません。長時間の抜歯となると、唇が切れてしまうことも起きます。

上顎洞につながってしまうことも

上の親知らずが深い位置に埋まっていると、歯根と上顎洞を隔てる骨が癒着していることがあります。まれに抜歯した際に骨も一緒に剥がれ、口内と上顎洞が交通してしまうことがあります。口内が上顎洞に繋がると、うがいの時に鼻から水がでたり鼻の空気が口に抜けるような症状があります。
小さい穴であれば自然治癒しますが、炎症を起こし上顎洞炎を起こしてしまう可能性もあるため、縫合で塞ぐこともあります。

下の親知らずの抜歯

下の親知らずは、下記の理由により手術が長引いてしまうことが多くなります。

骨が硬い

下顎は上顎に比べ、骨密度が高く骨が厚くなっています。歯根と骨が強固に結びついているために、スムーズに抜けずに時間がかかってしまいます。

横に生えやすい

下の親知らずは斜めに傾いて生えやすく、多くの場合で歯肉の切開が伴う手術となってしまいます。完全に横を向いている場合には、骨を削ったり歯牙を分割して取り除く処置を行います。大きな手術であるほど術後の痛みも続いてしまいます。

麻酔が効きにくい

骨が厚く麻酔が奥まで届きにくいため、浸透麻酔だけでは痛みを感じてしまうこともあります。複数回注射したり、広範囲に渡って作用する伝達麻酔を併用したりすることもあります。

神経を傷つける恐れがある

下顎には下歯槽神経という大きな神経が通っています。親知らずが神経に近い位置に生えている場合、抜歯の際にまれに神経を傷つけてしまうことがあり、下唇のしびれなどの症状が現れることがあります。通常数ヶ月で治りますが、神経の損傷がひどい場合には回復せずに後遺症として残ってしまうケースもあります。

抜歯後の痛みは?

親知らず抜歯の痛みは、上下ともに麻酔が効いている術中よりも麻酔が切れた術後の方が強く現れます。切開が伴う大きな手術であればあるほど傷が塞がるのに時間を要するため、上下で比較すると下の親知らずの方が治療が長引いてしまうことも少なくありません。
大体抜歯後2~3日は痛みや腫れが続きますが、以降は徐々に痛みも腫れも治まっていきます。
長期間痛みが続く又は痛みが増していくようであれば、下記の症状が疑われます。

ドライソケット

治療後に最も起きやすいのが、ドライソケットの症状です。抜歯後の空洞には血液がゼリー状に固まった血餅が詰まっています。血餅は患部を保護し、歯肉や骨などの歯周組織を形成し患部を治癒させる働きがあります。
口内が気持ち悪いからといってうがいをしすぎると、血餅が流れてしまい、白い骨が露出してしまいます。骨が露出したまま血液が止まってしまうと、患部を覆うものが何もなくなり強い痛みを感じるようになります。この痛みの症状をドライソケットといいます。ドライソケットになると自然治癒もしにくくなりいつまでも痛みが続いてしまいます。抵抗力が弱まっているため、骨が細菌に感染し骨炎を起こしてしまう可能性もあります。
ドライソケットは下顎の抜歯で起きやすい傾向にあります。理由として手術の侵襲が大きく骨が露出しやすい点や、骨が厚く出血しにくいという点が挙げられます。
ドライソケットの治療に有効なのは、患部の保護です。露出した骨を覆うことで痛みは直ちに軽減されます。再度切開する方法もありますが、麻酔が効きにくく余計に痛みを感じてしまうため、軟膏の塗布が一般的です。

ドライソケットの治療法

・患部を消毒し軟膏付きのガーゼで覆う
・鎮痛剤と抗生物質の処方
・再度切開し血餅を作る

隣接歯の知覚過敏

親知らずの抜歯が原因で、隣接歯にひどい知覚過敏を起こすことがあります。抜歯によって周囲の歯肉が一時的に後退し、隣接歯の歯根部が露出してしまうために起こります。歯肉の傷口が塞がることで知覚過敏も治ると考えられますが、我慢できないほどの痛みであったり、いつまで経っても治らないような場合には、神経を抜く処置を行わなければなりません。

隣接歯の虫歯

痛みを感じる原因が抜歯後の傷ではなく、隣接歯の虫歯によるものである可能性もあります。もともと親知らずと接していた歯に虫歯ができており、抜いた後に虫歯部分が露出したため痛みを感じたのかもしれません。抜歯の傷口が落ち着いた後に治療を行うことになります。

残根の炎症

歯牙を砕いて抜歯した場合、歯肉の中に残根が残ってしまうことがあります。この残根がしばらくして炎症を起こし腫れや痛みを起こすことがあります。炎症を起こした残根は、切開して摘出しなければなりません。
単なる見逃しで歯根を残してしまう場合もあれば、あえて歯根だけ残して経過観察をする方法もあります。わざと残すのは、無理に動かすことで神経に損傷を与える恐れがあるためです。自然に移動してくるのを待つか、炎症を起こさなければそのまま残しておくことになります。

隣接歯の破折

親知らずを抜いたことで咬合の変化が起き、負担が増えた隣接歯が割れてしまうことがあります。歯が破折すると、噛んだ時に痛みを感じたり、歯茎が腫れたり、膿が出たりします。

幻歯痛

ごくまれに抜歯後数年間に渡って歯が痛むことがあります。無いはずの歯が痛むことから幻歯痛と呼ばれています。幻歯痛は神経障害性疼痛の一つで、抜歯やインプラント治療の際に神経を損傷してしまうことで、痛覚を伝える神経に何らかの異常が起き、慢性的な痛覚過敏を引き起こします。
幻歯痛による痛みは、神経の過剰反応を抑える抗うつ剤や鎮痛剤などを投与することで抑えることができます。

痛くなる前の抜歯を

親知らずの抜歯は、上下どちらの歯も麻酔さえ効いていれば手術中に痛みを感じることはありません。麻酔の効きにくい下の親知らずは、人によっては麻酔が行き届かずに痛みを感じてしまうこともありえますが、歯科医師に伝えればすぐに追加で麻酔を打ってくれます。また伝達麻酔であれば骨の厚さに関わらず麻酔が効きますので、不安な場合には伝達麻酔を希望してみるのもよいでしょう。
ただし歯茎に炎症を起こしている場合は、麻酔が効きにくくなります。智歯周囲炎などを起こして親知らずの周囲が腫れている場合、腫れが治まってからでないと治療に入れないのです。親知らずが痛くなってから歯科医院に駆け込むのではなく、痛くなる前に抜いてしまうことをおすすめします。