歯周病治療の流れと進行度別の治療内容【図解】 | 歯医者の選び方 | 歯医者がおすすめする歯科医院
2017年6月26日

歯周病治療は、治癒というゴールを目指して幾つかの段階に分けて進められていきます。その途中には、小目標ともいえる次のステップに進むための条件も存在します。とはいえ、歯周病の原因や進行度は一人ひとり異なるため、一人ひとりに合わせたオーダーメイドの治療計画が立てられます。

その多くは長いスパンで行われるものなので、終わりが見えないように思えてしまいますが、実は徹底的な病状管理に基づいて合理的に進められているのです。

今回は歯周病の進行度別にみた5ステップの治療の流れについて、図を用いて説明しています。

歯周病

歯周病の5つの進行度

歯周病は細菌による感染症です。歯に付着したプラーク内の細菌が感染源であり、初めは歯肉に炎症を起こし、やがて歯槽骨などの内部組織にまで感染を広げ細胞を破壊してしまう疾患です。
虫歯や破折と並ぶ、歯を失う三大要因の一つでもあります。

虫歯の進行度をCO~C4と分けられるのと同様に、歯周病も炎症の進行度によってGO、G、P1、P2、P3の5段階に分けることができます。

炎症が歯肉の範囲内で起きているものを歯肉炎といい、歯肉炎(Gingivitis-ジンジバイティス)の頭文字Gで表されます。さらに進行度でGO~Gに分けられます。

炎症が歯槽骨まで進行したものは歯周炎と呼び分けられ、歯周炎(Periodontitis-ペリオドンタイティス)の頭文字Pで表されます。さらに歯周炎はP1~P3の進行度に分けられます。目安として、歯槽骨の吸収、歯周ポケット、根分岐部病変などの様子で分類することができます。

歯周病の分類

歯槽骨の吸収 歯周ポケット 根分岐部病変
歯周疾患要観察者(GO) なし なし なし
歯肉炎(G) なし なし なし
軽度歯周炎(P1) 歯根の1/3 3~5mm なし
中等度歯周炎(P2) 歯根の1/3~1/2 4~7mm 1/3未満
重度歯周炎(P3) 歯根の1/2以上 6mm~ 1/3以上
※根分岐部病変・・・根分岐部(歯の根の分かれ目)の細胞感染。検査器具(プローブ)を根分岐部に水平に差し込み、内部のどこまで進むかで重篤度を検査します。

歯周疾患要観察者(GO)

歯周疾患要観察者とは、簡単に言うと歯周病予備軍のようなものです。虫歯でいう要観察歯(CO)と同様の概念です。

歯周疾患用観察者は、歯にプラークの付着があり(歯石はない)、一部歯肉に軽度の炎症がみられるが、歯磨き指導などで治癒が見込める症状を指します。

直ちに治療を要する状態ではありませんが、歯肉炎に発展する可能性があり、適切な指導による改善が求められます。GOは学校の定期歯科健診でもよく判定されるように、学童期からみられる症状です。

歯肉炎(G)

歯肉の範囲で起きている炎症を歯肉炎といい、ここから歯科医院での治療が必要な段階に突入します。歯の表面には歯石の付着がみられ、歯茎が赤く腫れます。痛みはありませんが、歯磨きの時に出血することがあります。疲れたときなど免疫が低下した時に症状が現れやすくなります。

プラーク除去など原因因子を排除することで改善が十分に見込めます。

軽度歯周炎(P1)

歯肉炎を放置すると、炎症は骨にまで広がり歯周炎に発展します。特に歯槽骨の吸収が歯根の1/3以内、歯周ポケットが3~5mm程度の状態を、軽度歯周炎(P1)といいます。
炎症が進行すると、歯肉溝(サルカス)とよばれる歯と歯茎の溝(1~2mm程度)が深くなっていきます。歯肉溝が3mm以上になると歯周ポケットと呼ばれるようになり、この歯周ポケットの深さを調べることによって歯周炎がどれほど進行しているかを判断することができます。

P1は歯肉炎と同じように、歯茎の腫れと歯磨き時の出血がみられます。また、噛んだ時に違和感があることもあります。
20代の多くに現れ始めますが、まだ軽度なので、歯科医院での歯の清掃や徹底したセルフケアで改善が期待できます。

中等度歯周炎(P2)

歯槽骨の吸収が歯根の1/3~2/3以内、歯周ポケットが4~7mmに広がると中等度歯周炎(P2)と診断されます。P2段階になるとさらに骨の吸収が進み、歯肉退縮や歯の動揺が起き始めます。口臭も出て、歯茎の出血も目立つようになります。根分岐部にまで細胞破壊が進み、初期の根分岐部病変が現れることもあります。

中高年では珍しくない症状です。プラークコントロールだけでは治療が難しいケースもあり、外科手術が伴うこともあります。

重度歯周炎(P3)

歯槽骨の吸収が歯根の2/3以上、歯周ポケットが6mm以上になると、重度の歯周病(P3)です。P3まで症状が進んでしまうと、口腔機能にも支障が及びます。歯の動揺が激しくなり、咀嚼するときに痛みを感じて食べ物が食べられなくなります。歯茎からの排膿もみられ、口臭もかなりきつくなっているはずです。根分岐部病変については、1/3以上プローブが差し込めるまで症状が進んでいる場合、重度歯周病と診断されます。

治療は、プラークコントロールなどの基本治療に加え、骨を再生する歯周組織再生療法などが行われます。歯の保存が難しいと判断された場合には、抜歯となってしまいます。

歯周病治療の4つゴール

歯周病治療のゴールは、歯肉を正常な状態にできるだけ近づけ、口腔内を審美的、機能的に回復させることです。その後、改善した状態を永続的に保つことも重要視されます。終わりがないともいえますが、歯周病治癒の目安として次の4つの条件が挙げられます。すべて満たす必要があります。

歯肉の炎症がない

歯肉炎や歯周炎による歯茎の炎症の治癒です。原因となっているプラークの除去を行うことで、炎症を抑えることができます。腫れていた歯肉が落ち着くことで、歯肉が後退することもあります。

歯の動揺が生理的な範囲内である

重度の歯周病になると歯を支える骨が少なくなってしまうため、歯の動揺が大きくなります。動揺がある歯は咀嚼時に不安や痛みを感じますし、プラークコントロールにも難があります。
少なくなってしまった骨を再生する治療や歯の補綴を行って、動揺が生理的な範囲になるまで回復させます。痛みを感じずに食べ物を噛めるようになるなど、口腔機能の回復も一つのゴールです。

プロービング時の出血(BOP)がない

プローブという器具を使って歯周ポケットの深さを図ることをプロービングといいます。歯周病によって歯茎に炎症を起こしていると、プロービング時に出血(Bleeding On Probing)がみられます。出血がみられなくなるということは、歯周病が改善したことの一つの目安となります。

歯周ポケット3mm以下

歯肉辺縁からポケットの底までの距離を、ポケットデプス(PD)といいます。いわゆる歯周ポケットの深さを表す数字です。特にプローブを使って測定したものを、プロービングポケットデプス(PPD)といいます。このプロービングポケットデプスを3mm以下にすることも目標の一つです。

ただし、プロービングポケットデプスの単純な減少だけでは、本当に病状が改善したかどうかを判断することが出来ない点で注意が必要です。
詳しくは→歯周ポケット3mm以下は歯周病が改善したと言える?


歯周病の5段階の治療の流れ

歯周病の進行度によって治療内容も治療期間も変わりますが、保険診療での歯周病治療は、おおよそ下記のような流れで行われます。

歯周病治療の流れ

歯周病治療の流れ

歯周病の治療は大きく【1.検査→2.基本治療→(3.外科手術→4.安定期治療)→5.メインテナンス】の5つの段階を経て行われます。軽度の歯周病については、外科治療や安定期治療を行わずにメインテナンスに進みます。

最大5回の通院というわけではなく、各段階の治療は数回に分けて行われます。また、必ず次の段階に進む際に検査が行われます。歯周病の治療は、検査とその検査結果に基づいた処置の繰り返しです。歯周病の原因を把握し、原因の排除を行う治療を繰り返して経過観察を行います。

どの段階でも、基本的な治療内容は歯周病の直接的な原因であるプラークの除去が中心となります。また、歯周病の進行を助長させるリスクファクターの排除、必要に応じて歯肉形成術や歯周組織再生治療が行われます。数回の治療を経てゴール(治癒)に達すると、その後はメインテナンス期に入ります。

それぞれの段階の治療内容を紹介します。

1.歯周組織検査

治療は必ず検査の結果に基づいて合理的に行われます。初回の検査は、病状の原因把握とそれに基づく治療計画の作成が行われます。2回目以降の検査では、治療成果の確認とその結果に基づいた今後の治療計画のスクリーニングが行われます。
基本治療だけでなく外科的な処置が必要であれば歯周外科手術、病状安定すればSPT、治癒していればメインテナンス段階というように、検査の結果に基づいて次回の治療計画を立てていきます。

検査には、大まかに行われる歯周基本検査と、より正確に症状を把握できる歯周精密検査の2種類があります。どちらの検査を行うかは、必要に応じて歯科医師によって判断されます。
ただし検査の正確さは診療の成功率に大きく関係してくるため、多くの場合で歯周精密検査が選択されます。

歯周組織検査の内容

歯周基本検査 ・歯周ポケット測定(1歯1箇所以上)
・プロービング時の出血(BOP)の有無
・歯の動揺度
・プラークの付着状態の検査
歯周精密検査 ・歯周ポケット測定(1歯4箇所以上)
・プロービング時の出血(BOP)の有無
・プラークの染め出し検査
・歯の動揺度
・咬合関係の検査
・プラークリテンションファクターの検査
・根分岐部病変の測定

2.歯周基本治療

歯周基本治療は、歯周病の原因を取り除き、進行を抑えるための治療です。どの進行度の歯周病でも必ず行われる基本的な治療です。治療の初期だけでなく、必要に応じて各治療段階と並行して繰り返し行われます。

主な治療内容として、プラークや歯石の除去の他にも、プラークを増やす原因(プラークリテンションファクター)の排除や、歯周病の進行を早める咬合性外傷の改善も基本治療の内容に含まれます。
なお歯並びの不正もプラークリテンションファクターの一つですが、一定の条件下以外では保険診療の歯周基本治療には含むことはできません。

歯周基本治療の内容

スケーリング(SC) スケーラーを使って歯についたプラークや歯石を除去する処置
スケーリング・ルートプレーニング(SRP) プラークと歯石を除去したあと、汚染したセメント質や象牙質を一層剥がして表面を滑らかに整える処置
歯周ポケット掻爬(PCur) キュレットを使って歯周ポケットの内側の炎症歯肉を取り除く処置
ポケット内抗菌薬投与(LDDS) SCやSRP後に行われる、歯周ポケット内への抗菌薬の投与
プラークリテンションファクターの排除 咬合調整、虫歯治療、補綴物の再調整、食習慣の改善など
咬合性外傷の改善 欠損歯の補綴など一時的な機能性や審美性の回復、歯ぎしりの改善など
抜歯 保存不可能な歯の抜歯

3.歯周外科手術

中等度(P2)以上の歯周病になると、歯周基本治療だけでなく、感染した歯周組織を取り除く外科的な手術も必要になってきます。歯周外科治療を行う際には下記の条件を満たしている必要があります。

歯周外科手術の条件
・歯周ポケットが4mm以上
・プラークの付着が20%程度以下を維持できている
・歯肉が赤く腫れていない
・プロービング時に出血がみられる
・外科的手術が可能な患者である

歯周外科手術の内容

歯周ポケット掻爬術 歯周ポケット内側の炎症歯肉と汚染歯根面の除去手術。歯根を滑らかに整えて歯肉の付着の獲得(アタッチメントゲイン)を目指します。
外科的な侵襲は少ない反面、歯周ポケットの中が目視で確認できないため、取り残しも発生してしまいます。
新付着手術 メスを用いた歯周ポケット掻爬術。ポケット内部をメスで削げとってから歯肉を取り除きます。
歯肉切除手術 歯周ポケットを切り取る手術。確実にポケットの除去が可能ですが、歯肉後退と歯根露出によって知覚過敏や審美的な問題を起こすデメリットがあります。また付着歯肉が少ない場合には適応できません。
ポケット内抗菌薬投与(LDDS) SCやSRP後に行われる、歯周ポケット内への抗菌薬の投与
歯肉剥離掻爬手術(フラップ手術) 歯肉弁を剥離してから、炎症歯肉と汚染歯根面の除去を行います。また破壊された歯槽骨の形態を整えます。最後に歯肉弁を適切な位置で縫合します。
直接病巣を確認できるため、確実な除去が可能です。根分岐部病変の除去などにも有効です。
歯周組織再生誘導手術(GTR法) 保護膜によって歯肉の形成を抑制し、歯根膜や歯槽骨の回復を促す手術。
歯肉歯槽粘膜形成手術 歯根露出が激しい箇所に対して行われる歯肉の移動手術の総称。
・隣接歯の歯茎を引っ張って被せる歯肉弁側方移動術
・歯肉を移植する遊離歯肉移植術
・歯肉を歯冠側に引っ張って被せる歯肉弁歯冠側移動術
・歯肉を歯根側に下げて付着歯肉を作る歯肉弁根尖側移動術

4.歯周病安定期治療(SPT)

歯周病安定期治療(SPT)は、一連の歯周基本治療や歯周外科治療によって「病状安定」という診断を受けた人が対象となります。病状安定とは、治癒まではいかないですが、大部分の歯周組織が回復し、一部病変の進行が停止している状態を指します。具体的には、次のような症状を残している際には、歯周安定期治療(SPT)が適用されます。

歯周安定期治療が適用される例
・4mm以上の歯周ポケット
・根分岐部病変が残っている
・歯の動揺がある など

歯周病安定期治療(SPT)は、病状安定した歯周組織を維持するための治療です。中等度以上の歯周病は完全な治癒が難しく、歯科医院での定期的なプラークコントロールなどにより進行を止める必要があります。
安定期治療で行われる治療は下記のとおりです。

歯周安定期治療(SPT)の治療内容
・衛生士による口腔衛生指導
・機械的歯面清掃(PMTC)
・スケーリング(SC)
・スケーリング・ルートプレーニング(SRP)
・ポケット内抗菌薬投与(LDDS)
・咬合調整 など

基本的には3ヶ月に1回の頻度で行われますが、患者の状態が良ければ半年に1回と間隔を長くしていきます。逆に、下記のような理由で治療間隔の短縮が必要な場合は、月1回での頻度で行われることもあります。

治療間隔短縮が必要な場合
・歯周外科手術を行なった
・侵襲性歯周炎
・歯周病の進行に大きな影響を与える全身症状がある※
・全身症状により歯周外科手術が行えない※
※医師による診断書が必要です。

またかかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所に認定されている歯科医院であれば月1回でのSPTが可能になります。ただし通常の歯科医院での保険診療点数よりも高くついてしまう点で注意が必要です。

かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所について詳しくは→歯のクリーニングが保険適用内に?かかりつけ歯科医とは【平成28年度診療報酬改定】
安定期治療によって症状が回復し治癒が認められると、メインテナンス期へ移ります。

5.メインテナンス

メインテナンスは、治癒と判断された歯周組織を長期的に維持していくための予防処置です。歯周病は再発しやすい疾患のため、定期的なメインテナンスが必須となります。

治癒の4つの条件
・歯肉の炎症がない
・プロービング時の出血がない
・歯周ポケット3mm以下
・歯の動揺が生理的範囲内である

メインテナンスは、患者本人が行うセルフケアと、歯科医師や歯科衛生士によるプロフェッショナルケアが中心となります。プロフェッショナルケアについては、SPTとほぼ同じ内容となります。ただしメインテナンスは治療には当たらないため保険適用外となります。

メインテナンスの内容

セルフケア 毎日のブラッシングやフロス
プロフェッショナルケア ・衛生士による口腔衛生指導
・機械的歯面清掃(PMTC)
・スケーリング(SC)
・スケーリング・ルートプレーニング(SRP)
・ポケット内抗菌薬投与(LDDS) ・フッ素塗布
・咬合調整 など

インフォームド・コンセントに基づく治療計画を

歯周病治療は長い戦いになることも多く、患者はモチベーションを保つことが難しくなります。しかし、毎回の治療がなぜ行われているのか歯科医師がしっかりと説明し、患者もそれを理解していれば、自然とモチベーションも高まり治療は成功へと向かうはずです。
歯周病治療はインフォームド・コンセントに基づいて進められることが大切です。歯周病治療のための歯科医院を探す際には、自分が長く通いたいと思えるような歯科医院を選びましょう。