歯周ポケット3mm以下は歯周病が改善したと言える? | 歯医者の選び方 | 歯医者がおすすめする歯科医院
2017年7月6日

歯周病がどれだけ進行しているかを示す指標に、「歯周ポケットの深さ」があります。基本的には、歯周ポケットが深ければ深いほど歯周病は重症であると判断されます。逆に、治療によって症状が改善すればポケットは浅くなっていきます。

歯周病治療では歯周ポケットの改善も一つの目的となっています。具体的にはポケットの深さが3mm以下となれば正常な状態に戻ったといえます。ただしあくまで一つの目安に過ぎず、これだけでは完全に歯周病が治ったとはいえません。
実際の診療でも、歯周ポケットの深さはそこまで重要視されていません。では実際はどのような基準によって、歯周病の改善と進行が判断されているのでしょうか。
この記事では、歯周ポケットと歯周病の病状把握についてまとめています。

歯周ポケット

歯周ポケットとは

歯と歯茎の間の溝を歯肉溝といい、特に歯肉溝の深さが3mm以上になったものを歯周ポケットとよびます。歯肉溝が深くなるのは、プラーク内の歯周病菌が起こす炎症によって歯茎が腫れ、歯との接着が剥がれてしまうためです。

一度歯周ポケットができると、ポケットの内部にもプラークが入り込み、炎症をどんどん広げていってしまいます。歯周病が進行すればするほど、歯周ポケットも深くなっていくのです。

深くなった歯周ポケットを改善するためには、スケーリング(SC)やスケーリング・ルートプレーニング(SRP)といった歯周病基本治療を行い、炎症の原因であるプラークを取り除く必要があります。数回の治療を続けるうちに、歯肉の炎症や腫れが引き、歯周ポケットも浅くなっていきます。


歯周ポケットと歯周病の進行度

歯周ポケットの深さを測ることで、歯周病の進行度をある程度推定することができます。健康的な歯肉溝は1~2mm程度です。3mmを超えると歯周炎とよばれ、炎症は歯肉だけでなく歯槽骨にまで広がっている可能性があります。軽度~重度歯周炎の歯周ポケットの深さは次の通りです。

軽度歯周炎 中等度歯周炎 重度歯周炎
歯周ポケットの深さ 3~5mm 4~7mm 6mm~

歯周ポケットの測定方法

歯周ポケットの深さはプローブという器具で計るために、プロービングポケットデプス(PPD)とよばれています。目盛りのついたプローブをポケット内部に入れ、ポケット底から歯肉辺縁までの距離を測ります。検査の方法にもよりますが、歯1本につき周囲1~6箇所の深さを測定します。

プローブによる検査(プロービング)では、歯周ポケットの深さを始めとして、出血の有無や目に見えない歯肉縁下歯石の付着状況のチェックも行われます。

POINT:プロービングでの検査項目
・歯周ポケットの深さ(プロービングポケットデプス)
・出血がみられるか(炎症の有無)
・歯肉縁下(歯根部)に歯石があるかどうか
・アタッチメントレベル(セメント-エナメル境からポケット底までの距離)

歯肉に炎症があると、プロービング時に出血が見られます。炎症の沈静化も歯周病治療の目的の一つです。実はプロービング時の出血の有無は、歯周ポケットの深さ以上に歯周病治療の成否を判断する有効な手立てとなります。

アタッチメントレベルとは、歯肉から出ているエナメル質と歯根部のセメント質との境目からポケットの底までの距離をいい、歯周ポケットとは別に測定しておくことで、歯周病の経過をより正しく知ることができます。次の項で詳しく説明いたします。


アタッチメントレベルの必要性

歯周病治癒の一つの目安として、歯周ポケット3mm以下という条件があります。歯周病治療が奏功し歯茎の炎症が治まってくると、歯肉が締まり歯周ポケットも浅くなっていくからです。
しかし歯周ポケットが3mm以下になったからといって、必ずしも歯周病が改善したとはいえないことに注意が必要です。


歯周ポケットの深さは相対的指標

なぜ歯周ポケットの減少=改善でないのか、理由を説明します。次の3つの事象は、どれも歯周ポケットの減少を引き起こすと考えられるものです。わかりやすくするために具体的な数値を記載しています。

歯周ポケットが浅くなる3つのパターン

1.○腫れた歯肉が治って、歯肉辺縁が下がった。(-2mm)
2.◎歯と歯肉の付着が強まり、ポケット底が上がった。(-2mm)
3.✕歯肉が退化し、歯肉辺縁(-3)もポケット底(+1)も下がった。(-2mm)

1と2は快方に向かっていますが、3のように明らかに悪化しているケースでもポケットの減少は起こりえます。
歯肉辺縁もポケット底もどちらも変動するため、歯周ポケットの深さは相対的に決まります。単純な増減だけでは、治療の正確な成否を判断することはできないのです。


アタッチメントレベルは絶対的な指標

そこで、歯周病治療の成否を判断する際には、歯周ポケットの深さだけでなく、アタッチメントレベルという指標が用いられます。

アタッチメントレベルは、セメント-エナメル境(CEJ)という歯の構造上の基準点からポケット底までの距離を表したものです。セメント-エナメル境とは、エナメル質で覆われている歯冠部分と歯根部分の境目のことをいい、歯周病の進行に関わらず不変の基準点となりますので、ポケット底の上下を正しく知ることができます。


アタッチメントレベルと治療の成否

アタッチメントレベルの増減によって、治療の成否を判断することができます。
治療が奏功して歯と歯肉が付着した場合、ポケットは底上げされてアタッチメントレベルは小さくなります。このことをアタッチメントゲインといいます。
逆に歯周組織が破壊されて歯肉が剥がれてしまうと、ポケット底は深くなりアタッチメントレベルも増加します。このことをアタッチメントロスといいます。

ポケットの上下、つまり歯と歯肉の付着具合を示すアタッチメントレベルは、特に歯周組織再生治療において重要視される指標です。

POINT:アタッチメントレベル
アタッチメントレベル:セメント-エナメル境(CEJ)からポケット底までの距離
歯周病改善・・・アタッチメントレベルの減少(アタッチメントゲイン)
歯周病進行・・・アタッチメントレベルの増加(アタッチメントロス)

術後と術前の比較が大切

治療中に何度も行われる歯周病検査において、歯周病が改善したかどうかを判断するには、歯周ポケットの深さだけでなく、アタッチメントレベルの確認が必ず行われます。
加えて重要なのは、治療前と治療後の数値の変化に注目するということです。一回の検査で出た数値で判断するのではなく、アタッチメントレベルがどれだけ増減したかが大切です。

先の歯周ポケット減少の例2と例3では、歯周ポケットの値ではなくアタッチメントレベルを比較することで治療の経過の良し悪しについて容易に判断することができます。
2の例では、2mmのアタッチメントゲインが起きていることから、歯周病が改善していることがわかります。3の例では、1mmのアタッチメントロスにより病状が進行していることが明らかとなります。

アタッチメントレベルの増減

2.◎歯と歯肉の付着が強まり、ポケット底が上がった。(-2mm)
3.✕歯肉が退化し、歯肉辺縁もポケット底も下がった。(+1mm)


ポケット底の2つの定義

これまで述べてきた歯周ポケットの深さ(プロービングポケットデプス)は、解剖学的な意味での本当のポケットの深さではないことに注意が必要です。
実は歯周ポケットには、組織学上のポケットと、臨床で用いられているポケットの異なる2つの概念があります。これらを区別することで、さらに歯周病ついての理解を深めることができます。
どちらも歯肉辺縁からポケット底までの距離を指すものには変わりませんが、ポケット底についての定義が異なります。


組織学上のポケットデプス(PD)

組織学的ポケットでは、ポケット底を「歯肉に付着する接合上皮の最も根尖側の部分」と定義しています。実際の検査では行うことはありませんが、顕微鏡などで解剖学的に調べた時のポケット底であり、本当の意味でのポケット底ともいえます。
組織学的なポケットの深さをポケットデプス(PD)といい、「歯肉辺縁から接合上皮の最根尖部までの距離」と定義されています。


臨床で用いられるプロービングポケットデプス(PPD)

一方、実際に臨床の場で測られるプロービングポケットデプス(PPD)がポケットの底としているのは、厳密にいうと「測定に用いるプローブの先端」です。
臨床上のプロービングポケットデプス(PPD)は、正しくは「歯肉辺縁からプローブ先端までの距離」となります。いわゆるポケットの深さとは、プロービングポケットデプスのことを指しています。

POINT:2つの概念
ポケットデプス(PD):歯肉辺縁から接合上皮の最根尖部までの距離
プロービングポケットデプス(PPD):歯肉辺縁からプローブ先端までの距離

PDとPPDの関係

ポケットデプスとプロービングポケットデプスは、類似した値にはなりますが一致はしません。
歯肉に炎症が起きている場合、プローブの先端は接合上皮を貫通してしまいます。組織の接着が弱っているために、本当の底部よりも下に入ってしまうのです。歯周病が進行している際には、プロービングポケットデプス(PPD)は実際のPDよりも深く測定されてしまいます。
逆に歯周病治療により歯肉が引き締まると、圧力でプローブの先端がポケット底部に届かないことがあります。改善に向かっている場合は、プロービングポケットデプス(PPD)は実際のポケットデプス(PD)よりも短く測定されるのです。

POINT:PDとPPDの関係
歯周病進行・・・ポケットが実際よりも大きく測定される(PPD>PD)
歯周病改善・・・ポケットが実際よりも短く測定される(PPD<PD)

2つのアタッチメントレベル

アタッチメントレベルについても、ポケット底部の定義によって、組織学的アタッチメントと臨床的アタッチメントレベル(CAL)に分けることができます。臨床的アタッチメントレベルは、プロービング・アタッチメントレベル(PAL)とも表現されます。

POINT:2つのアタッチメントレベル
組織学的アタッチメントレベル:CEJから接合上皮の最根尖部までの距離
臨床的アタッチメントレベル(CAL、PAL):CEJからプローブ先端までの距離

まとめ

歯周ポケットが3mm以下になったからといって、歯周病が改善したとは言い切れません。出血の有無や、治療前と後のアタッチメントレベルの比較をすることの方が、病状の把握においては有意義な情報となります。
またプロービングで測定したポケットの深さは、歯周病の改善や進行に関連して、実は組織学的にはズレが生じてしまうということも大切な概念です。病状をしっかりと理解することは、歯周病治療成功の第一歩となります。