歯科訪問診療とは?保険適用の条件と費用まとめ | 歯医者の選び方 | 歯医者がおすすめする歯科医院
2017年7月11日

高齢化が進む中、「QOL(クオリティオブライフ)」の向上のために、国や地方自治体は様々な取り組みを行っています。 中でも、高齢者や身体が不自由な人など、自分で歯科医院に行くことが難しい人に向けた歯科訪問診療の領域は、平成28年度の保険点数改正において多くの評価の見直しが行われました。
歯科医院を受診している患者の1/3が65歳以上の高齢者ということからも、高齢者の歯科診療のニーズが高まってきていることがわかります。

今後ますます重要度が高くなってくることが予想される歯科訪問診療について紹介します。気になる費用や保険適用についてもまとめました。

歯科訪問診療

歯科訪問診療とは

歯科訪問診療とは、高齢や病気などにより歯科医院へ行くことが難しい患者に対して行われる在宅診療の一つです。歯科医師や歯科衛生士が患者の自宅や療養先に訪問して、口腔ケアや治療を行います。
自宅や療養先に出向いて行われる在宅診療には、訪問診療の他にも往診というものがありますが、これら2つは異なる医療サービスです。歯科における訪問診療と往診の違いについて説明します。

訪問診療

訪問診療とは、定期的な訪問計画を立てて診療を行う医療サービスです。患者や家族の同意を得た上で、月に2回など予め訪問日を決めて歯科診療を行います。他の医療機関との連携も行い、かかりつけの歯科医師としてそれぞれの患者に適した診療計画を立てていきます。
継続的な治療が必要であり、本人が歯科医院に通うことが出来ない場合に適したサービスです。

往診

往診は、通院が困難な患者やその家族から要請があったときにのみ行われる医療サービスです。急な歯の痛みや入れ歯の不具合が発生した際の応急処置として行われます。一回きりの不定期の処置である点で訪問診療とは異なり、できることも限られてきてしまいます。

歯科訪問診療を受けられる条件

保険内での歯科訪問診療は、誰でも受診できるわけではなく、申し込むためには一定の条件が必要です。

通院が困難である

高齢や病気により、寝たきりの状態や身体が不自由であるなど、やむを得ない事情で通院が難しい場合に限られます。要介護認定や医師による診断書が必要な場合もあります。通院が面倒であるなどの事情では保険適用はできません。
歯科訪問診療の対象者となるかどうかは、歯科医師によって判断されます。

歯科医院から16km以内の距離にある

基本的に保険内の訪問診療の対象となるのは、歯科医院から半径16km以内の地域に限られます。限られた医療資源の中で、近くに歯科医院があるのにも関わらず、わざわざ遠くの歯科医院を呼ぶことは許されていないのです。また、緊急時には地域の保健施設と連携した医療を行うためにも、地理的な近さにあることが望ましいとしています。
ただし下記の事情がある場合にのみ、16km以上離れた歯科医院でも対応が可能となります。

16kmを超えての在宅診療が可能になるケース
・患者の希望により、自費負担で診療を行った場合
・患者の所在地から16km以内に、保険での訪問診療を扱う歯科医院が存在しない
・冬期の積雪などで道路状況が悪く、訪問に時間がかかった場合には、保険での診療が可能

歯科訪問診療の保険適用について

歯科訪問診療は、医療保険と介護保険の2つが適用されます。

医療保険

医療保険とはつまり健康保険のことです。医療保険の費用は「点数」で表され、1点=10円で換算されます。負担割合は年齢と所得によって決まります。

医療費負担割合

年齢 負担割合
6歳未満 2割負担
6歳以上 3割負担
70~74歳 2割負担
(ただし現役並所得者は3割負担)
75歳 1割負担
(ただし現役並所得者は3割負担)

介護保険

介護保険は、介護認定を受けた40歳以上の人が対象となる保険です。なお、40~64歳の人については特定疾患が原因での介護認定でなければなりません。要介護度によって月額の上限が存在します。限度額については地域によって異なるケースもありますので詳しくは市町村の窓口にお問い合わせください。
介護保険の費用は「単位」で表され、1単位=10円で換算されます。
負担割合については所得によって下記のように決まります。

介護保険負担割合

収入額 負担割合
合計所得160万円以上かつ、
単身:年金収入+その他合計所得金額=280万円以上
夫婦:年金収入+その他合計所得金額=346万円以上
2割負担
上記以外 1割負担

歯科訪問診療の費用

歯科訪問診療にかかる費用は1.診察料、2.治療費、3.指導料の3つから成ります。
診察料と治療費については医療保険の適用となりますが、口腔ケアや指導料については、訪問先によって医療保険適用か、介護保険適用かが変わってきます。
1割負担の場合は1点(単位)=1円で換算され、2割、3割負担の場合は、点数(単位)×2円、点数(単位)×3円で自己負担分の計算が可能です。

1.歯科訪問診療料(医療保険)

歯科訪問診療料は、訪問1日につき必ずかかる費用です。訪問先の患者数と診療時間によって決まります。医療保険の適用となります。

歯科訪問診療料(初診・再診料含む)

訪問先診療人数 診療時間
20分未満 20分 30分ごと
1人
(歯科訪問診療1)
120点 866点 +100点
2~9人
(歯科訪問診療2)
120点 283点
10人以上
(歯科訪問診療3)
120点 120点

さらに歯科医院が一定の条件を満たしている場合には、下記のような加算があります。訪問先の診療人数によって加算点数が変わります。

歯科訪問診療料への加算

訪問先診療人数 急性対応加算 訪補助加算 在推進加算※1 地域医療連携体制
加算※2
1人
(歯科訪問診療1)
170点 110点 100点 300点
2~9人
(歯科訪問診療2)
55点 45点
10人以上
(歯科訪問診療3)
55点 45点

在宅患者等急性歯科疾患対応加算(急性対応)は、歯の切削や歯冠修復に対応できるように、歯科タービンなどの切削器具や周辺機器を常備している場合に加算されます。
歯科訪問診療補助加算(訪補助)は、歯科衛生士が同行し歯科訪問診療の補助を行った場合に加算されます。
また、在宅歯科診療推進の施設基準を満たした歯科医院については、在推進加算として100点が、地域医療連携体制加算の施設基準を満たし、所定の手続きを行っている場合には300点がプラスされます。

※1 在宅歯科医療推進の施設基準

・歯科診療所であること
・その診療所で実施される直近3か月の歯科訪問診療の実績が月平均延べ5人以上で、そのうち6割以上が歯科訪問診療1を算定していること

※2 地域医療連携体制加算の施設基準

・保険医療機関の認定を受けた歯科診療所であること。
・以下の①及び②の要件を満たす医療機関との連携により、緊急時の歯科診療体制が整っていること。
①緊急時の歯科診療体制の整備/在宅歯科診療の調整担当者が1名以上いる/カルテ管理の整備
②歯科訪問診療を行う体制が整備されている保険医療機関
・連携保険医療機関に対して予め必要情報を提供していること。
・患者や家族に予め連携保険医療機関の詳細情報を交付していること。

2.治療費(医療保険)

訪問診療の治療費は、通常よりも1.3~1.7倍程点数が高くなります。すべて医療保険の適用です。下記に一例を記載致します。

処置内容 一歯あたりの点数
普通抜歯 前歯 225点
臼歯 390点
難抜歯加算 315点
う蝕処置 27点
抜髄 単根 296点
2根 543点
3根以上 882点
感染根管処置 単根 187点
2根 382点
3根以上 648点
レジン充填 350~500点
インレー修復 350~1,000点
クラウン修復 850~3,000点
歯周基本治療 スケーリング100点~(1/3顎)
SRP及びPCur 100点~(1歯)
入れ歯作成 2,500~9,000点
入れ歯調整 1回 100~300点

3-1.医学管理(医療保険)

指導料については、病院・特別養護老人ホーム・老人保健施設などに入居している場合には、医療保険の適用となります。その他施設でも、介護認定を受けていない人については医療保険が適用となります。

医学管理(医療保険)

訪問歯科衛生指導料
(月4回まで)
20分未満・・・120点
20分以上・・・360点
歯科疾患在宅療養管理料
(月1回まで)
一般歯科医院・・・180点
在宅療養支援歯科診療所※3・・・240点
文書提供加算・・・+10点
栄養サポートチーム連携加算・・・+60点
在宅患者歯科治療総合医療管理料※4 Ⅰ・・・140点(月1回まで)
Ⅱ・・・45点(1日につき)
在宅患者連携指導料
(月1回まで)
900点
在宅患者緊急時等カンファレンス料
(月2回まで)
200点
フッ化物歯面塗布処置
(月1回まで)
100点
摂食機能療法
(月4回まで)
185点
舌接触補助床・・・2,000点
旧義歯・・・500点
装着料・・・120点
在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料 0~9歯・・・350
10~19歯・・・450
20歯以上・・・550

訪問歯科衛生指導料とは、歯科医師の指導に基づき、歯科衛生士が訪問先の患者の口腔内清掃を行った場合に算定される点数です。

歯科疾患在宅療養管理料は、患者や家族の同意の上で、患者の口腔状態について説明しカルテに記載した場合に算定されます。歯科疾患在宅療養管理料に加算のある在宅療養支援歯科診療所の施設要件は下記のとおりです。

※3 在宅療養支援歯科診療所の施設基準

・過去1年間に歯科訪問診療料を算定している実績がある。
・高齢者の心身の特性、口腔機能の管理、緊急時対応等に係る適切な研修を修了した常勤の歯科医師が1名以上配置されていること。
・歯科衛生士が配置されていること。
・歯科訪問診療が可能な保険医を予め指定するとともに、担当者情報、診療可能日、緊急時の注意事項等について、事前に患者や家族に対して説明の上、文書提供していること。
・在宅医療を担う保険医療機関と連携を図り、必要に応じて情報提供できる体制を確保していること。
・他の保健医療サービス及び福祉サービスの連携調整を担当する者と連携していること。
・在宅歯科診療に係る後方支援の機能を有する別の保険医療機関との連携体制が確保されていること。
・年に1回、歯科訪問診療の回数等を所定の様式を用いて、地方厚生(支)局長に報告していること。

在宅患者歯科治療総合医療管理料Ⅰは、施設基準を満たした医療機関が、別の医療機関の主治医から全身状態に関する情報提供を受けた患者に対し、総合的な医療管理を行った場合に算定されます。
Ⅱは、施設基準を満たし、高血圧性疾患、虚血性心疾患、不整脈、心不全または、脳血管疾患がある患者について歯科治療時に全身状態の変化などを把握するため、患者の血圧、脈拍、経皮的酸素飽和度を時間経過とともに監視するなど必要な医療管理を行った場合に算定されます。

※4 在宅患者歯科治療総合医療管理料の施設基準

・十分な経験のある常勤の歯科医師、歯科衛生士により、治療中、治療前後の患者の全身状態を管理できる状態が整っていること。
・常勤の歯科医師が2名又は常勤の歯科医師、歯科衛生士が1名以上ずつ配置されていること。
・パルスオキシメーター、酸素供給装置、救急蘇生セットを有していること。
・緊急時に対応可能な別の保険医療機関との連携体制が整備されていること。

在宅患者連携指導料は、別の医療機関でも訪問診療を行っている場合に、医師から共有された全身状態の診療情報を踏まえて診療を行った場合に算定されます。

在宅患者緊急時等カンファレンス料は、歯科医師または歯科衛生士が、患者の診療を行っている別の医療従事者と患者の所在地でカンファレンス(会議)を行った場合に算定されます。

摂食機能療法は、摂食障害のある患者に対して診療計画を元に嚥下訓練を30分以上行った場合に算定されます。

3-2.居宅療養管理指導費(介護保険)

自宅・グループホーム・有料老人ホームに入居していて、要介護認定を受けている場合には、介護保険の適用となります。
居宅の要介護認定者でも、在宅患者緊急時等カンファレンス料や一部医療保険の適用が可能な項目もあります。

居宅療養管理指導費(介護保険)

歯科医師による居宅療養管理指導費
(月2回まで)
同一建物1人・・・503単位
単位同一建物複数人・・・452単位
歯科衛生士による居宅療養管理指導費
(月4回まで)
同一建物1人・・・352単位
単位同一建物複数人・・・302単位
口腔衛生管理体制加算/td> 30単位
口腔衛生管理加算 110単位

居宅療養管理指導費は、要介護認定者に対して歯科医師や歯科衛生士が歯科訪問診療を行った場合に算定されます。介護保険によって居宅療養管理指導費を算定した場合には、医療保険での訪問歯科衛生指導料や歯科疾患在宅療養管理料は算定できません。

歯科医師による居宅療養管理指導費は、要介護者に訪問診療を行い、計画的かつ継続的な医学管理に基づき、患者や家族、ケアマネージャーへケアプラン策定のための情報提供を行った場合に算定されます。

歯科衛生士による居宅療養管理指導費は、訪問診療を行った歯科医師の指導に基づいて「管理指導計画」を作成し、その「管理指導計画」に従って療養上必要な実地指導を20分以上行った場合に算定します。

口腔衛生管理体制加算は、歯科医師に指導を受けた歯科衛生士が、指定介護老人福祉施設の介護職員に対して口腔ケアに関する指導を月1回以上行った場合に、施設によって算定されます。

口腔衛生管理加算は、歯科医師に指導を受けた歯科衛生士が、指定介護老人福祉施設の入所者に対して口腔ケアを月4回以上行った場合に、施設によって算定されます。

歯科訪問診療の申し込み方法

申込みは、歯科訪問診療を扱っているお近くの歯科医院に直接電話での連絡をしましょう。訪問診療の条件を満たすかどうかの事前確認後、検診が行われて具体的な治療計画が立てられていきます。
ただし歯科訪問診療を扱う歯科医院はまだまだ少数です。訪問歯科を扱っているかどうかは、歯科医院のホームページで確認するか、電話での問い合わせを行う必要があります。
または日本訪問歯科協会のホームページから対応エリアを調べることができます。下記では訪問診療の申込みも可能です。
訪問診療を申し込む|患者様・介護事業者の皆様へ|日本訪問歯科協会
http://www.houmonshika.org/patient/request/
口腔機能の維持は全身の健康にも繋がります。歯科訪問診療を扱っている歯科医院を探して、積極的に利用しましょう。