歯の神経を抜くと起きる5つのデメリット | 歯医者の選び方 | 歯医者がおすすめする歯科医院
2017年7月20日

わたしたちの身体には隅々にまで神経が通っており、神経があるからこそ熱さや冷たさ、痛さやくすぐったさなど様々な感覚を感じることができます。歯にも同じように神経が通っているため、冷たいものを食べたときにしみたり、虫歯になると痛みを感じたりします。
歯科治療には、神経を抜く治療があります。神経を抜くということは、歯以外の身体で考えると恐ろしいことのように思えますが、何らかのデメリットは起きないのでしょうか。
そもそも歯の神経を抜くとはどういうことで、抜く理由とはどのようなものなのでしょうか。歯の神経を抜く治療についてまとめています。

歯の神経

歯の神経を抜く治療とは

歯の神経を抜く治療を、根管治療といいます。硬い組織に囲まれている歯の内部には、神経や血管(歯髄)が通っている根管と呼ばれる管が通っています。根管治療は、根管内の歯髄を取り除き、中をきれいに洗浄・消毒したあとに薬剤を詰めてフタをする治療です。削る範囲も大きいため、根管治療の最後にはクラウンを被せて歯を修復します。
根管の洗浄は数回にかけて行われるため、治療には数週間の通院が必要です。症状によっては数カ月に伸びることもあります。 歯の内部の治療であることから、歯内療法とも呼ばれます。

歯の神経を抜く3つの理由

なぜ歯の神経を抜かなければいけないのでしょうか。その理由として次の3つが挙げられます。

歯を残すため

歯の神経の治療は、このままでは抜歯になってしまう状態の歯を残すために行われる治療です。抜歯となってしまえば、二度と自分の歯は戻ってきません。少しでも長く自分の歯を残すための最終手段として行われる根管治療は、歯科保存治療の一つでもあります。

痛みを抑えるため

歯の神経にまで細菌感染が広がると、冷たいものだけでなく温かいものを食べても不快な痛みが続いたり、食べ物を噛む度に強い痛みを生じます。最終的には何もしなくても強い痛みを感じるようになります。顎やリンパの腫れ、発熱が伴う場合もあります。歯だけでなく、肩や頭部などの関連痛も起こります。これらの痛みを抑えるためには、痛みの原因である歯の神経を抜く必要があるのです。

細菌感染を抑えるため

感染した細菌は、歯や歯肉などの歯周組織から神経や血管を通じて全身へと広がっていきます。血液中の細菌が多くなる菌血症を起こすと、骨髄炎、髄膜炎、心内膜炎などの全身の感染症に繋がります。その他角膜炎、扁桃炎、中耳炎なども、虫歯や歯周病の原因菌が起こす病気です。

歯の神経を抜く4つのケース

歯の神経を抜かなければいけない状態とは、何らかの原因により歯の神経に刺激が加わり、歯髄炎という神経の炎症を起こしている場合です。歯髄炎でも、特に、虫歯や歯周病などの細菌が原因のものと、外傷などの物理的刺激が原因となっているものがあります。

重度の虫歯

進行度でいうとC3にまで進行した虫歯は、基本的に神経を取り除く治療が必要となります。C3の虫歯は歯の深部にある神経(歯髄)にまで達した虫歯と定義されています。
プラーク内の虫歯菌が、外側のエナメル質を溶かし、さらに内側の象牙質を溶かすと、歯の内部で管のように通っている神経に感染してしまいます。歯髄炎といって神経が炎症を起こしている状態であり、ズキズキと脈打つような激しい痛みを感じます。やがて神経が壊死すると痛みを感じなくなります。
神経の炎症が歯冠部に留まるような浅いものであれば、神経を抜かずに炎症を抑える処置を行いますが、痛みが治まらない場合には一部の神経だけを取り除く処置を行います。(可逆性歯髄炎)
一方で炎症が歯根部の神経にまで広がっている場合には、すべての神経を取り除く必要があります。(不可逆性歯髄炎)

重度の歯周病

歯周病の進行によって歯周組織の炎症が歯根の先にまで広がると、歯根の外部から内部の神経にまで炎症が波及することがあります。歯冠部分からではなく歯根部分の歯周組織から歯髄炎を起こすことから、逆行性歯髄炎、上行性歯髄炎とよばれます。
このように、歯そのものには問題がなくても、歯周組織の炎症が原因で歯の神経を抜かなければならないこともあります。 歯周病菌により歯槽骨の吸収が激しいと、歯がグラつく不安定な状態になります。歯の動揺が大きい場合には、抜髄ではなく抜歯を選択される可能性もあります。

歯の破折や破損

事故による外傷や歯ぎしり・食いしばり癖などにより歯が割れたり折れたりしてしまうと、神経がむき出しになり痛みを感じます。また割れた箇所から細菌が入り込み神経に炎症を起こしてしまうこともあります。この場合でも回復が見込めない場合には神経を抜く処置が必要となります。

重度の知覚過敏

オーバーブラッシング、歯茎の後退、噛み合わせの悪さなど、様々な理由によって我慢できない程の知覚過敏を起こした場合、抜髄によって痛みを和らげる処置が行われることがあります。
抜髄は最終手段なので、薬剤の塗布や詰め物をしたりしても痛みが引かない場合にのみ行われます。

歯の神経を抜く5つのデメリット

歯の神経を抜く治療は、必要性のあるものであることはわかりますが、では実際に抜いた後のデメリットとしてどのようなことが起きるのでしょうか。可能性として次の5つのデメリットが挙げられます。

再感染のリスクがある

根管治療において最も大切なのは、いかに根管内を無菌状態に保つことができるかです。根管内の消毒が十分でないまま治療を進めてしまったり、少しでも感染した歯髄を取り残してしまったりすると、高い確率で再感染を起こします。また根管は人によって形が異なり、複雑なものだと難易度が一気に高まります。
根管内に通す器具(ファイル、リーマー)は細く、治療中に折れてしまうこともあります。欠けた器具を根管内に残してしまうトラブルも決して珍しくなく、術者の技術と経験や、一定水準以上の設備環境が求められるリスクの高い治療であるといえます。

時間と費用がかかる

また、根管治療は初回の治療よりも再治療の方が、成功率が低くなる傾向があります。治療を繰り返すほど再発しやすくなってしまうのです。長期間の治療は、経済的にも精神的にも疲弊してしまいます。
そして根管治療を繰り返した歯は、最終的には抜歯となってしまいます。抜歯後も原因不明の痛みに苦しまされることもあります。詳しくは→抜いたはずの歯が痛い!?抜歯後も痛みが続く幻歯痛とは

自覚症状を感じなくなる

痛みは、何らかの不具合のサインです。歯の神経を抜くことで痛みを感じなくなると、例えば再感染した場合にも自覚症状がないために、気づいたときにはかなり症状が進んでしまっていた、ということも起こりかねません。
再感染を放置すると、歯根の先端に膿袋(歯根嚢胞)ができ、骨を溶かす膿が溜まってしまいます。こうなると痛みや腫れが出るため、症状に気づきます。膿袋ができると症状を繰り返すこともあるため、外科的に摘出する手術が伴うこともあります。

歯の耐久性が低くなる

神経を抜いた歯は死んでしまった歯です。神経だけでなく血管も取り除いてしまっているため、歯に栄養が届かずに耐久性が下がってしまいます。広範囲に渡って削られるため、構造的にももろくなってしまいます。
神経のある健康な歯では耐えられていた歯ぎしりや食いしばりによって、歯が割れてしまう可能性が高くなります。これまでと同じ感覚では使えなくなってしまうのです。抜髄した後の歯の破折は保存が難しく、多くの場合で抜歯となってしまいます。

歯が変色する

歯の神経を抜くと歯に水分が行き渡らなくなり、黒く変色してしまうことがあります。神経を抜いてしまうとレーザーによる漂白効果が薄れてしまいますので、ホワイトニングが難しくなります。
ただし根管治療を行った歯は削る範囲も大きいため、修復のために歯全体に被せ物をすることがほとんどです。変色しにくいセラミックの素材を使うことで、審美性を保つことができます。

歯の神経の治療は専門医へ

歯の神経を抜く治療には、再感染のリスクや歯の性質の変化などのデメリットがあります。歯の神経を抜かなくてはならない状態は、事故などの外傷でない限り、何らかの歯の異常を放置した結果起こることです。普段から歯の健康に気遣っていればそうそう起こることではありません。神経を抜くことにならないように、日頃から口腔ケアをしっかり行い、歯科医院への定期的な受診を行うことが大切です。
やむをえず歯の神経を抜くことになった場合には、根管治療を得意とする専門医のもとで治療を受けましょう。