眠ったまま治療が終わる?痛くない麻酔「静脈内鎮静法」のメリットとデメリット | 歯医者の選び方 | 歯医者がおすすめする歯科医院
2017年8月3日

歯医者の麻酔が怖くて治療が受けられないという人も多いのではないでしょうか。また口の中に異物を入れられると「オエッ」とえずいてしまう、全身的な疾患があるといった理由で、歯科診療から遠ざかってしまうケースも珍しくありません。 そんな歯科診療が困難な人たちにおすすめなのが、「静脈内鎮静法」という麻酔を使った診療です。ほとんど眠ったまま治療を受けることができるため、手術中の恐怖感や嘔吐反射をなくすことができます。
虫歯や歯周病は、風邪とは違い自然治癒するものではありません。歯医者に行くのを拒み続けると最終的には歯を失ってしまいます。そうなる前に、静脈内鎮静法のメリットやデメリットを知って、歯医者受診のきっかけにしてみてください。

静脈内鎮静法とは

静脈内鎮静法とは、腕や手の甲に精神安定剤を点滴して、精神を落ち着かせる麻酔のことをいいます。痛みを抑える鎮痛効果はありませんので、通常局所麻酔と併用して行われます。

こんな人に向いている

下記に当てはまっている場合には、静脈内鎮静法による治療が適しています。

静脈内鎮静法の適応例
・歯医者や歯科治療に強い恐怖感がある
・口の中に手を入れられると嘔吐反射を起こしてしまう
・長時間の外科的な手術を受ける
・高血圧症や心疾患を持っている
・精神障害がある

眠ったまま治療が可能?

静脈内鎮静法は意識をぼんやりさせる効果があり、点滴をされると徐々に眠気が生じてきます。治療中は半分眠ったような状態になりますが、完全に意識を失うことはなく、歯科医師の呼びかけには応じることができます。

全身麻酔との違い

手術箇所にだけ作用する局所麻酔とは異なり、全身に作用する全身麻酔では意識が完全になくなります。筋弛緩薬によって呼吸機能も止まってしまうため、術中は人工呼吸による管理が必要です。
対して静脈内鎮静法では、意識はぼんやりとしているものの、呼吸機能には影響を与えません。

静脈内鎮静法のメリット

静脈内鎮静法のメリットとして、次の6つが挙げられます。

恐怖感などの感覚が薄れる

気持ちを落ち着かせる効果があるため、治療への恐怖感やドキドキとした緊張感・興奮を抑えることができます。局所麻酔に先立って行われるため、麻酔に対する恐怖感も薄れます。さらに局所麻酔の前に表面麻酔を行うことで、最初から最後までほとんど痛みを感じないまま治療を行うことができます。薬の成分により、強い嘔吐反射も抑えることができます。

血圧が安定する

高血圧症や心疾患がある場合でも、静脈内鎮静法によって体への負担を抑えることができます。術中は血圧計や心電図を使って患者の状態を管理しているため、安心して治療を受けることができます。静脈路を確保しているので、もしものときでもすぐに緊急の投薬が可能です。

治療中の嫌な記憶が残らない

軽い健忘状態になるため、痛みを感じたとしても記憶として残りません。また、気がついたら治療が終わっていたなど、手術の時間が実際よりも短く感じることもあります。治療中物音へも意識がいかなくなるため、歯を削るキーンという音も気になりません。

保険適用内

静脈内鎮静法は保険適用内の診療です。120点(1点10円)と定められているため、3割負担であれば360円で可能です。ただしすべての歯医者において保険適用内で扱っているわけではないため、注意が必要です。またインプラントなど保険外の診療に用いる場合には、麻酔についても保険外となります。自費の場合の費用は歯医者によって変わりますが、数千円~数万円ほどかかるようです。

日帰り手術ができる

術後、速やかに覚醒するため、入院の必要がありません。激しい運動や運転などを除き、術後も通常通りの生活ができます。また長時間の手術でも患者へ負担がかかりにくいため、通常は数回に分けて行う数カ所の治療を一日で済ませることができます。

全身麻酔と比べてリスクが少ない

全身麻酔後は、吐き気や頭痛、寒気などの症状が起こりやすくなりますが、静脈内鎮静法については体調の低下時を除き副作用はほとんどありません。
また全身麻酔では呼吸が止まるため、気管にチューブを挿入して人工呼吸を行う必要があります。適切な処置が行われないと、術後に呼吸器の合併症を起こすリスクがあります。最悪の場合、脳障害や心停止を起こすこともあります。
その点、静脈内鎮静法は自分で呼吸ができるため、呼吸の管理が必要ありません。

静脈内鎮静法のデメリット

静脈内鎮静法にもデメリットはありますが、そのほとんどが麻酔治療に共通したデメリットであるといえます。次の5つの事項が挙げられます。

局所麻酔を併用する

静脈内鎮静法はあくまで精神を落ち着かせる効果がメインであり、単独で強い痛みを抑えることはできません。局所麻酔を併用して痛覚を抑える必要があります。

術中は点滴を刺したまま

術中は麻酔薬を持続的に投与する必要があるため、治療開始から終了時まで、針を血管に刺したままでいなければなりません。刺している時に痛みは感じませんが、刺す時と抜く時にチクッとした痛みを生じることもあります。

合併症のリスク

静脈内鎮静法だけでなく、長期間の点滴すべてにいえることですが、血管の損傷、点滴漏れのリスクがあり、血管痛、術後静脈炎などの合併症を起こす可能性があります。当然ながら、経験のある麻酔医によって適した状況下や手順で行われなければ、合併症のリスクは高まります。

眠気が残る

術後も数時間は眠気やふらつきが残ることもあるため、手術当日中は、自動車の運転や激しい運動はできません。頭もぼんやりするので、重大な決断などは翌日以降に先送りした方が良いかもしれません。

アレルギーにより適応が限られる

麻酔全般におけるデメリットですが、麻酔の成分にアレルギーがある場合には適応できません。ただし麻酔薬の種類によっては症状が出ないこともありますので、どの麻酔薬であれば問題ないかを検査することで適応可能となるケースもあります。

まとめ

静脈内鎮静法は、歯科恐怖症の患者にとってまさに救世主のような診療方法であるといえます。これまでの恐怖がウソのように、ストレスを感じることなく治療を受けることができます。昔受けた診療のせいで歯医者がトラウマになっているような人は、これを機にもう一度歯医者の門戸を叩いてみてください。
ただし静脈内鎮静法はすべての歯医者で扱っているわけではないので、事前の問い合わせが必要です。また、静脈内鎮静法によって起こりうる合併症を防ぐためにも、麻酔専門医が在籍している歯医者で治療を受けることをおすすめします。