差し歯とインプラントの違いとは?差し歯はなぜ使われなくなった? | 歯医者の選び方 | 歯医者がおすすめする歯科医院
2017年10月5日

差し歯という言葉がよく使われていますが、歯茎に差し込むというイメージから、インプラントを想像する人もいるのではないでしょうか。しかし差し歯はクラウンの一種であり、インプラントとは全く別のものです。
また、クラウンの一種といっても、わたしたちが知っているクラウンとも少し異なるものであり、過去に保険適用から外されている方法で現在ではほとんど使われていません。
今回は、差し歯とインプラントの違いや、クラウンの分類、またなぜ差し歯が使われなくなったのかについてまとめてみました。

差し歯とは

差し歯とは、虫歯などで根っこの方まで削った歯に、人工の歯を取り付けて修復する方法のことをいいます。歯の根に差し込むように取り付けることから、差し歯と呼ばれています。

差し歯のメリット

神経にまで達した虫歯で歯根しか残っていない場合でも、歯を残しての治療が可能です。衝撃を吸収する歯根膜が残ることで、自然な装着感や噛みごたえ、発音機能を維持することができます。また印象の回数が一回で済むため、比較的短期間で作成することができます。

差し歯のデメリット

差し歯は、穴の空いた歯根へ金属の芯棒を差し込んで補綴する方法です。ポストとも呼ばれる芯棒はくさびのような形状をしているため、咬合時に強い力が加わり歯根を痛めてしまいます。さらに、水平方向にかかる揺さぶりの力(ジグリングフォース)もかかり歯根が破折し、差し歯が脱離してしまうこともあります。予後が悪く、将来的に再治療が必要となります。

インプラントとは

差し歯が、まだ残っている歯を修復するための方法であるのに対し、インプラントはすでに抜歯などで失ってしまった歯に代わって人工歯を入れる方法です。
歯根の代わりに、ネジのような人工物を歯肉内に直接埋め込み、そこに土台と歯冠部分を取り付けていきます。インプラントも差し込む過程があることから、差し歯と混同されてしまうことが多いようです。

インプラントのメリット

インプラントは、歯槽骨に直接固定されているため、噛んだ時に安定感があり、固いものでも噛み砕くことができます。また、ブリッジなどのように健康な歯を削る必要がないので、別の歯に影響を与えることなく機能回復することができます。見た目も自然で、天然歯と遜色ありません。

インプラントのデメリット

外科的な手術が必要なので、高血圧、糖尿病、心血管系疾患などの全身疾患がある場合には、適応外となることがあります。またインプラントを埋めるために十分な骨の量が必要なので、歯周病を患っている場合には手術をすることができません。
術後には定期的なメンテナンスが必要であり、これを怠るとインプラント周囲炎になるリスクがあります。

クラウンとの違い

差し歯はクラウンの一種です。クラウンは大きく分けて、歯冠全体を覆う全部被覆冠と、歯冠の一部を覆う一部被覆冠に分けることができます。さらに全部被覆冠のうち、根に差し込む芯棒(ポスト)と歯冠部分が一体となったものを歯冠継続歯といい、差し歯はもともとこの歯冠継続歯を指す言葉でした。
現在主流になっているクラウンは、ポスト含めたコアと呼ばれる土台部分と歯冠部分が、上下で別々に作られる二層構造となっています。しかし歯冠継続歯はポストから歯冠部分まで一体となっている単一構造をしており、実はこのひとつなぎの構造に問題が多く、現在ではほとんど使われていません。
歯冠継続歯自体は廃れていきましたが、差し歯という言葉は今でも広く使われており、歯冠継続歯だけを指す言葉ではなく、二層構造のものを含めたクラウンを指す言葉として残っています。
なお、歯冠継続歯の差し歯は前歯にのみ使用されていましたが、二層構造のクラウンは場所を選ばずに治療することが可能です。

クラウンの種類

全部被覆冠 全部鋳造冠:すべて金属でできたクラウン
前装鋳造冠:金属の歯冠の前から見える部分にだけレジンなどの白い素材を被せたクラウン
ジャケット冠:金属の裏打ちがなく、すべてをレジンなどの白い素材で作るクラウン
歯冠継続歯(差し歯、ポストクラウン):根の中に入れる芯棒(ポスト)と歯冠部分が一体になったクラウン
一部被覆冠 3/4冠:前歯の4面(頬側面、舌側面、近心面、遠心面)のうち、3面だけを被せたクラウン
4/5冠:奥歯の5面(頬側面、舌側面、近心面、遠心面、咬合面)のうち、4面だけを被せたクラウン

なぜ差し歯は使われなくなった?

差し歯(歯冠継続歯)はその構造上の問題により、現在では使われていない方法です。以前は保険適用内の方法でしたが、現在では問題のある古い方法として保険適用から外されています。
差し歯が原因で起こったトラブルとして、次のようなものが報告されています。

歯根破折が起きやすい

根管治療で神経を取り除いてしまった歯は、とても脆くなっています。差し歯の根の部分は金属でできているため、歯が金属の固さに負けてしまって折れてしまうことがあります。差し歯での補強が、かえって歯をダメにしてしまう可能性があるのです。

適合が悪い

金属は凝固の過程で収縮します。大きい鋳造物ほど差が出やすいため、ポストと歯冠部分が一体となった差し歯は、精密さの欠ける、適合が悪いものができてしまいやすくなってしまいます。
適合が悪い補綴物は外れやすく、隙間もできるため二次カリエスのリスクも高くなってしまいます。

除去が難しい

固い金属のポストが差し込まれている差し歯は除去が難しく、再治療ができない点でも致命的です。無理に除去しようとすると一緒に抜けてしまうこともあります。二次カリエスが出来てしまうと最悪の場合、抜歯となってしまうこともあります。
また、レントゲンだけでは差し歯なのか二層構造のクラウンなのかの判別がつきませんので、削ってみてはじめて差し歯であることが分かるということもあります。

まとめ

差し歯が自分の残った歯根を利用して歯の機能を回復させる補綴方法であるのに対して、インプラントは人工の歯根を使った外科的な補綴方法であることがわかりました。
また、差し歯はクラウンの一種ではありますが、構造の上の違い(コアと歯冠部分が繋がっているかそうでないか)があります。差し歯の由来であるひとつなぎの歯冠継続歯はもう使われていない方法であり、現在では二層構造になっているクラウンが一般的になっています。差し歯という言葉も、広く二層構造のクラウンをも含めた言葉になっています。
歯冠継続歯において、歯根破折の原因となっていた金属の固いポスト(メタルポスト)は、現在でも保険適用のクラウンの土台として使われています。二層構造にはなっていますが、やはり歯根破折などの問題が多いため、最近では土台としてファイバーポストという柔軟性に優れた繊維の素材が好んで使用されています。ファイバーポストは平成28年1月に保険適用となっているため、ますます多くの歯科医院で取り入れられるようになっています。
差し歯という言葉一つとっても、歯科医療の進歩を垣間みることができますね。