牛込神楽坂駅A1出口から大久保通りを若松町方面へ約3分。ガラス張りでしゃれた雰囲気を醸し出しているのが「AOデンタルクリニック牛込神楽坂」だ。ここは大島俊彦院長が歯科診療を通じて地域貢献したいと2020年10月に開業。院内はバリアフリーで診療室は完全個室、トイレにはおむつ交換台を設置するなど患者へのこまやかな配慮が随所に見られる。大島院長はどんな治療を行う際もマイクロスコープや拡大鏡を使用するなど精度の高さにこだわった治療を実践。「内覧会の時、クリニックの雰囲気から自由診療だけなのではと思った方も多かったようですが、保険診療でも精密な治療をきっちり行うことを大切にしています」と大島院長。そんな大島院長にクリニックの特徴や歯科医療への思いを聞いた。

ここ牛込神楽坂に開業なさったきっかけを教えてください。
特に何か牛込神楽坂に深い縁があったというわけではなく、開業するにあたって自分の理想の条件と合致したことが大きな理由です。住宅街の中で開業して、小さなお子さんから大人の方までご家族全員を診ていきたいと考えていましたので、古くからの住宅街である牛込神楽坂はぴったりだったのです。子どもたちも比較的多く、小学校が3つあるエリアなのですね。少し離れるとマンションも立ち並び、若い世帯も住んでいます。条件の中で最も重視したのが1階であること。1階で路面にあるほうが患者さんも入りやすいですし、ガラス張りにしているので何となく中の茶囲気もうかがえると思います。
内装などはどんな点にこだわったのですか。
クリニックというと寒色系や無機質のイメージになりがちですが、ここは暖色系で温かいイメージにしています。床も木目調にして患者さんがリラックスできる雰囲気にしました。歯科クリニックは一般的に配管を床下に配置するので少し床が高くなることが多いのですが、ここは新築ビルで最初から段差のないように設計しています。ですので、入り口は歩道との段差がないのでベビーカーや車いすも入りやすいと思います。診療室は完全個室となっておりプライバシーを気にすることなく治療を受けていただけます。診療時間も1時間とってじっくりと治療を行っています。ユニットを行ったり来たりして同時に複数の患者さんを治療することはないですし、患者さんをユニットで長時間待たせるといったこともありません。

そのほうが安心しますね。医療設備の点ではどのような特徴がありますか?
まず治療時には、基本的にマイクロスコープを使用して精密な治療をめざしています。マイクロスコープを用いない場合も拡大鏡を使用しており、歯科衛生士も拡大鏡を必ず使用しています。肉眼で治療するということはないですね。肉眼ではぜんぜん見えないものもマイクロスコープでははっきりと確認できるんですよ。衛生管理も徹底していて、欧州基準でクラスB規格の滅菌器を導入しています。また、飛沫や粉塵への対策として口腔外バキュームをすべての診療室に設置するなど感染予防に努めています。

診療の際、モットーとしているのはどんなことですか?
患者さんがもしも自分の家族だったらどのように対応するか、といつも考えながら診療を行っています。症状や治療を説明する時にはできるだけわかりやすいように口腔内写真やマイクロスコープの画像を見せてお話しするなど、歯科医療の「見える化」を図っています。患者さんもビジュアルで見ると納得しやすいですし、治療にも前向きになると思います。ただ、中には歯のアップ写真は苦手という人もおられますので、そのあたりは確認しながらお話ししています。また初診の際は、必ず歯科衛生士が口腔内写真を撮影し、その写真やレントゲン、歯の検査など、その人の口の中の状態を詳細に示して3ページ程度にまとめた冊子をお渡ししています。虫歯の進行度や歯周ポケットの深さなど歯や歯茎の状態を細かく示して、それらに対するコメントも記しています。こういったデータがあると、後でご家族と相談するときなど参考になりますし、治療前と後の比較もできます。
小さな子どもの患者にはどんな工夫をなさっているのですか?
この界隈は歯科治療に理解あるお子さんたちが多い印象です。最初はお母さんの治療を横で見てもらい、この器具はこんなふうに使うんだよなどと話していくうちに、抵抗なく治療を受け入れてくれます。子どもの治療の時は目隠しをして麻酔下で行いますが、まず表面麻酔をしています。その時「ちょっと触るね」と言ってから麻酔をかけていき、痛みをほとんど感じさせずに治療を進めるように努めています。実はそれが自身の麻酔の技術のチェックにもなっているんですね。大人は少し痛くても忖度して我慢してくれますが、子どもは正直ですから。

今後力を入れていきたいことはどんなことですか?
特に何か一つの分野に特化するということではなく、虫歯治療や補綴、根管治療など一般歯科すべてにおいて精密で質の高い治療をめざしています。例えば、虫歯治療やセラミックを使った補綴治療の時にもラバーダムという防湿シートを使用して唾液の侵入を防ぐようにするなど、より精度の高い治療を行えるように努めています。セラミックを接着させる際、唾液で少しでも湿気てしまうと接着状態が悪くなる場合もありますので、一つ一つ最善の策を講じるように心がけています。患者さんは何をしているか、何のためにしているかよくわからないかもしれません。ですが、やはり自分がされたい治療を患者さんにしてあげたいと思っていますので、できるだけ緻密で丁寧な治療を心がけています。

根拠に基づいた医療と患者の背景に基づく医療との融合 歯科の勉強会にも関わっていらっしゃるとか。
はい。今、若手歯科医師と歯科衛生士を対象としたスタディーグループに役員として関わっています。このスタディーグループでは、EBM(Evidence-based medicine) と呼ばれる根拠に基づいた医療と、NAM(Narrative-based medicine)と呼ばれるナラティブに基づいた医療を融合させた歯科医療について勉強しています。根拠に基づいた医療は重要ですが、その一方でナラティブ、つまり患者さんの背景や物語、対話に基づく歯科医療も重要です。この両者をどのように考えて、最良の落としどころをどう見つけていくか、この点が今後の歯科医療で大切だと思います。この勉強会にはいずれ当クリニックの歯科衛生士も参加してもらいたいと考えています。
ところで、先生はなぜ歯科医師をめざされたのでしょうか。
父が群馬で歯科クリニックを開業していて母も歯科衛生士という中で育ちましたので、ごく自然に歯科医師をめざすようになりました。弟も歯科大学にいますので、やはり育った環境が大きいのでしょう。父は、地域に根づいた医療を提供して地元の人たちからすごく慕われていました。私も開業したばかりですが、父のクリニックのように、この地域の中で信頼を得て、多くの方々に親しまれるクリニックにしていきたいと思っています。

最後に、今後の展望をお願いいたします。
現在当院は歯科医師4名(非常勤の矯正医を含む)歯科衛生士5名、歯科助手4名で診療を行っております。診療室は完全個室が6部屋、マイクロスコープ2台完備しております。
2020年に開業して2年が経過し、スタッフ数も増えたことで多くの患者様をお受けできるようになってまいりました。
今後は歯科医師、歯科衛生士の知識技術面をレベルアップするため歯科衛生士の講師を招いた院内セミナー、外部の講習会などに参加し常に知識技術をアップグレードしていく集団でありたいと考えております。そこで得られたものを通院していただいている患者様に還元し地域医療に貢献していきたいです。