九州の開業医では2人しかいない日本歯科保存学会と日本歯内療法学会の2つの専門医資格を取得されている牛尾先生。専門医だからこそ基本に忠実に、日々丁寧な診療をされています。そんな先生に医院の特徴や今後についてなどインタビューさせていただきました。

日本歯科保存学会認定 歯科保存治療専門医
日本歯内療法学会認定 歯内療法専門医
うしお歯科クリニックの特徴を教えてください。

当院はビジネス街にあるので、朝8時から診療しているところが特徴です。
また、私は日本歯科保存学会と日本歯内療法学会の専門医資格を取得しています。この2つの専門医資格を取得しているのは九州では私含め4人しかいません。さらに開業医としてやっているのは2人しかいないので、そこは大きな特徴だと思っています。
専門医の定義は色々とありますが、日本口腔外科学会では、「それぞれの診療領域において適切な教育を受け、十分な診療技能を修得し、患者から信頼される標準的な専門医療を提供できる医師」とされています。まさにその通りで、標準的な医療を提供できる歯科医師が専門医であるべきだと私は思っています。
教科書に載っているような基礎的なことが実は1番大事なことで、1番できていないことでもあります。歯科医師になってからもう1度教科書を最初から最後まで読んでいる人はどれくらいいるのでしょうか。
1回でいいので、教科書を最初から最後まで読んでみるべきです。意外と「なるほど」と思うようなこともたくさんあります。基礎を知らなくても臨床はできるのかもしれませんが、継ぎ接ぎだらけの知識だと説明や技術に絶対に表れてきます。
基礎的なことが本当にきちんとできているのかを日々振り返りながら、当たり前のことを当たり前に教科書通りにやることを大切にしています。

当院は、説明を重視しているので、基本的に説明の時間を長めに確保しています。説明の際は、具体例をあげてわかりやすく説明することを心がけています。
例えば、「セラミック」がなぜいいのかを日常生活で身近なトイレを例にお話しています。
なぜトイレでセラミックを使っているかというと、材質が劣化しないからです。水が常に流れている環境では材質は基本的に劣化していきます。
特に保険診療で使うレジン系は材質が徐々に劣化していき、壊れてしまいます。トイレも常に水が流れる環境で汚れも付着するので、劣化しにくく、汚れが取りやすいセラミックを採用しているのです。
口の中も同じで常に水分で満たされ、汚れも着く環境なので、材質が劣化したり壊れたりせずに、汚れも綺麗に取れるセラミックがおすすめですといったような具体例を交えながらお話をしています。

故事のひとつに「巧詐は拙誠にしかず」という言葉があります。
言葉巧みに誤魔化すよりも、拙くても誠実にやることに勝るものはないという意味で、私はこの言葉を大事にしています。
時間がないからと中途半端に「まあいっか」で治療を終わらせてしまうと患者さんは再びむし歯になってしまったり、歯が壊れたりするかもしれません。
「まあいっか」ではなく「時間内で終わらなかったので、申し訳ないのですが、もう1度お時間をいただけませんか」ときちんとお伝えすべきだと思っています。
こちらがなにも言わなければ、誤魔化せば、患者さんは気づくことはないのかもしれませんが、患者さんが今後迷惑をこうむることが私はすごく嫌なので、誠実に患者さんと向き合って、一つひとつの基礎を間違いなく、丁寧に治療することを心がけています。

診断で治療の8割が終わっているとある先生が言っていました。その通りだと思います。
診断をするためには色々な情報がわからなければならないので、情報を収集するため、診断をするための機器として当院はマイクロスコープと歯科用CTを導入しています。
また、安心・安全な治療をご提供するために、歯と唾液・細菌の接触を避けるラバーダムを使用しています。
今後の歯科業界についてと先生の展望を教えてください。
大規模な歯科医院が今後は増えていくと思います。例えば歯科用CTも1日に5人から10人来る小さな医院で1台持っているよりも、100人来る大規模な医院が1台持っている方が同じ1台でも回転率が全然違います。そういった経営の効率化の面からも個人経営の歯科医院は減っていき、大規模医院が増え、そこに勤める歯科医師が今後は増えていくのかなと思っています。
そして、今すぐには難しいと思いますが、すべてを1人で診るという診療形態ではなく、診療科がアメリカのように保存科、歯周病科、インプラント科、口腔外科、小児歯科といったように分かれて診ていくようなスタイルになったらいいなと思っています。
すべての分野でスペシャリストになれたらベストですが、それは現実的に難しいです。色々な分野に手を出して広く浅くやるくらいなら、1つの分野に集中して突き詰めて勉強した方がいいと私は思うタイプです。
大規模な医院が増えることで、診療科も専門分野ごとに分かれやすくなると思いますし、その方が患者さんにとってのメリットも大きいのかなと思っています。

今後に関してですが、九州の歯内療法のレベルを底上げしたいと考えています。
若手の先生の中には、いざ勉強しようとしても、「高いセミナー代がかかるのでは?」「都会まで勉強しに行かなければならないのでは?」と思っている人も多いです。
実際にそんなことはなくても、やはり学べる環境はたくさんあった方がいいと思います。
また、基礎的なことがわかっていない先生が実は多かったり、どこで、なにを勉強したらいいのか困っている先生もけっこういると聞いていました。なので、将来的に自分の専門分野である歯内療法を若手の先生方が東京や大阪まで行くことなく、安価で学べる環境を作りたいと考えています。
それが実現し、基礎を理解して、実践できる先生が増えてくれば、私が診る患者さんだけでなく、その先生たちが診た患者さんもきちんとした治療を受けられるので、広い意味で多くの患者さんを救うことができると思っています。